2010年5月15日(土曜日)[ コラム「しじゅう」 ]

青年の主張

最近関わった新規の生活保護申請事例です。

訪問していろいろと事情を聞いて、何気なく「どうしてもっと早くに相談しなかったのです?」と尋ねた私に彼女は「頑張らなきゃいけないと思ったんです。今でも働いて誰にも心配をかけないようにしないといけないと思っています」と返しました。調査が終わりにさしかかった頃、「隠していたわけじゃないんですが、実は3社からお金を借りています」と打ち明けてくれました。

派遣社員の彼女が得る賃金はおよそ14万円。そこへ児童扶養手当と児童手当を足したのがひと月の生活費です。足りない分をサラ金から借り、返済期限が迫ると他で借りて利息を入れ、元金の返済を延期する。

「返しても返しても借金がなくなりません」。彼女は追加の融資が受けられなくなってようやく生活保護の申請に至ったのでした。

すべての人が病んで借金を重ねてもなお、強迫的に働くことを強いる社会。その根本に私は人事考課が絡んでいると考えています。「業務の質・量」に始まり、性格特性までも考課され、いかに業務に工夫を凝らして取り組む用意があるか、その結果、どれだけの実績を残したか。繰り返し説明を求める絶えざる恫喝がきょうも職場に響ています。

人事考課は、私たち職員には生活保障という賃金の役割を極めて周到に忘れさせることに成功し、市民をギリギリまで頑張らせてしまっています。だから、私たちは言わねばなりません。「効果的な人材育成・能力開発など余計なお世話だ。生を値踏みするな」と。

市当局は「職員の意欲ややる気に応える」「がんばった人が報われる」と謳っていますが、そんな表向きだけのスローガンを本気で信じているらしい人たちにこそ「指導育成」が必要なのではないでしょうか。

そもそもモチベーションの向上なんていう発想にシラケている職員も多いはずです。私たち自治体労働者は市民の命を守るため、市民をギリギリまで頑張らせない社会にしていくために、人事考課の網からスルリと抜け出さなければなりません。愚直に、けれども見た目にはカッコよく、職制の監視をやり過ごす力量を身につける必要があるのではないでしょうか?

「横浜市従」第1248号(2010年5月15日)より

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