2010年12月15日(水曜日)[ たばこ病のない世界を・・・ ]

【第10回】人工呼吸器から戻って

入院4か月半、自宅療養4週間、なお息苦しい日々の中で

「希望はうしなっていません」という言葉はあっても
「なおります」とは言ってもらえない
人工呼吸器が挿管された9日間。本人は意識も遠のいて
何の記憶もないが
家族は泣いていた。
友は反応のない手を握って
ひそかに別れを告げていた
肺気腫の上に喘息で3度目の重発作 2度あることは3度ある、というのか
3度目の正直で もうダメなのか 今までの2回も 命をかけたギリギリのところで 何とかもどってきたのだった
9日間はのど深く差し込まれた人工呼吸器による強制的な呼吸の繰り返しだった
手も足も鼻の穴まで点滴だ
医師団の懸命な治療
24時間の看護が続くその結果抜管とともに自力呼吸にもどることができた
「自力呼吸している!」
医師の大きな声で目覚めたとき なんだかポカンとした気分だった なにもまだわかっていないのだった しかし
息が苦しい とにかく苦しい
酸素8(1分間に8リットルの酸素供給)でも話ができない
脱力してしまい、
自分では顔も拭けない
大小便もできない
ベッドに座ることもできない
何もできないのである
ただ息をしている
ひといき一息が全てなのだ
何もしない できないので
時間が止まったようになる
息苦しい夜がもう明けないのではと思えてくる
やがてまた息がつまってしまうような 不安に襲われる
ようやく朝がくる
1日・2日・10日・ひと月と日々を重ねるなかで
診察と検査・治療が続く
献身的看護に支えられ
いきつもどりつし、
ジグザグしながらも
回復してくる
顔が拭けるようになる
歯が磨けるようになる
ヒゲが剃れるようになる
やがて ベッドの上で小便ができるようになる ベッドの脇で大便もできるようになるベッドに座って生意気なことを言えるようになる
食事をすることもできなかったのに うまいだの もうひとつだのと言っている
人間に戻ってくる そうなる
と心も人間らしくなる
まだ息は苦しいが
話ができること
気持ちが通いあえること
あたりまえのことが
最高にうれしい
生きていることがわかる
生きかえったことが
実感できる
家族が 友だちが
仲間がいることが
うれしい、ありがたい
便りがある
見舞いにきてくれる
ひとのやさしさ
思いやりが 身に沁みる
生きて 人間の世界にもどる
ことができた
ことばがかわせる 握手がで
きる 笑顔の交歓ができる
何ていいんだろう
ありがとう ありがとうと
走りまわりたい
そんな思いに満たされている
「お互いに元気」
これが一番だね

2001年9月15日

「横浜市従」第1260号(2010年12月15日付)より

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