2010年12月15日(水曜日)[ コラム「しじゅう」 ]

憲法25条の精神こそ自治体行政の原点

11月末に映画「いのちの山河」を観た。老人医療費無料化で全国に知られた岩手県沢内村(現・西和賀町)の話。除雪用ブルドーザーさえ買えず、乳児や老人が医者に罹れないまま亡くなってしまう当時の貧しい沢内村と今の横浜市が重なる。

「人は健やかに生まれ、健やかに育ち、健やかに老いる権利がある」と村民に訴える深澤村長。キノコ栽培を地場産業に育成すべく駆けずり回る農協職員を助役に迎え、保健師を雇い、大学病院に日参し医師を招く。予防医療を重視し乳児医療無料化も決断し全国初の乳児死亡率ゼロも達成する。輝きを取り戻す住民と生き生きと働く自治体労働者、そこには公務員バッシングなど微塵もない。

地域主権戦略会議で「一括交付金になれば社会保障を削減して橋や道路にという自治体も出てくる」という懸念に、仙石官房長官は「そういう首長や議会を選んだ住民が悪い」と応じたという。憲法25条を住民の自己責任に帰す地域主権改革は沢内村とは真逆だ。

予防医療で医療費が減ることは実証済みで、利用者負担を増やし医者にかかりにくくすることは重篤化を招き医療費を増大させるものだ。「財源」が無ければこそ沢内村に学ぶべきではないのか。

「海外に出ていく」と脅す多国籍企業への出血サービスをやめ地場産業や地元企業への支援をこそ行うべきだ。憲法25条をないがしろにするような自治体づくりやそのための「人材育成」であっては、不夜城のごとく仕事に励んだとしても、住民と自治体労働者との溝は深まるばかりだ。

公務員バッシングも激しくなるだけだろう。貧しかった沢内村でやれたことが今の日本でやれないわけがない。軍隊も警察官のピストルさえも無くしその財源を教育に振り向けて「憲法9条」を実践してきたコスタリカという海外事例もある。憲法25条の精神こそ自治体づくり、国づくりの原点だと思う。

「横浜市従」第1260号(2010年12月15日付)より

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