第44回「 すてられた いぬ」
すてられた いぬ
文・絵 カーチア・ゲーアマン
訳 佐々木 田鶴子
講談社
なかなか遠出が叶わない私は目にしていないのですが、友人とのおしゃべりから、ドライブインでのゴミ捨てが一層進んでひどい状況になっている、と聞きました。
持ち帰りがなぜできないのかしら。自分のゴミ(だけじゃありません)に責任を持たない大人たち、そしてそれを見て育つ子どもたち、あぁ、日本はどんな国になってしまうのでしょう。
でもゴミならまだ許せます。捨てられたのは犬、きょうの絵本の主人公です。
《ぼく、かいぬしに すてられちゃったみたいだ。これから ひとりぼっちでいきていくのかなぁ…》とカバーの内にあります。
ある夏の暑い日に、車で遠いところまで乗せられて「ほら、ここでおりるんだよ」と言われます。遊んでくれるのかな、と木の枝を探しに行って戻ってきたら、そこには家族の車は見あたりません。
隠れているのかなぁ、それともぼくのこと忘れて家に帰ってしまったのかしら。そうだとしたら、家はどっち?…。
疑うことを知らないこのブチの犬の、身の上に起きた様々な出来事をゲーアマンは淡々と語ります。
それがかえって哀しくなります。途方に暮れながら歩いて歩いて海辺に出ます。
もしかしたらここに、と走り回って探すのですが、追い払われたり怒鳴られたり。だんだん人間不信になっていきます。
家族の行方を尋ねた犬の「おまえ、すてられたんだよ」と決定的なひと言。
《ぼくは はらがたって それから とてもかなしくなった。ほんとうに、ぼくをほったらかしにして、みんなかえってしまったんだろうか》
犬のほうは家族と思っていたのに、家族はいとも簡単に捨ててしまった…。
もう人間なんてみたくない、ひとりで生きていける、という思いを覆させたのは潜り込んだ船の船長。
「きみがいてくれて嬉しいな。海の上ではひとりぼっちだから」
01年に「世界絵本原画展」で最高の賞を受けたゲーアマンの絵は「思いのまま描きました」という感じでしょうか、伸びやかで気持ちがいいのです。
最後のページには、大うなばらを蒸気を吐きながら進む船、船首には行く手を見つめる、あのブチの犬が。とても幸せそうな顔で。
「横浜市従」第1203号(2008年4月1日)より




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