2012年5月23日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第2山】尾瀬ヶ原 約1400m「遥かな尾瀬を守って」

「♪夏が来れば思い出す、遥かな尾瀬………水芭蕉の花が咲いている……」

尾瀬と聞けば水芭蕉と言う位のお決まりフレーズだが、実は水芭蕉は夏の花ではない。尾瀬での最盛期は6月上旬位、下界では初夏の陽気だが山の上では雪解け後に最初に魅せるのが水芭蕉。下界の気候感覚では早春くらいの花なのだ。

山歩きに縁のない人でも尾瀬の名を知らない人はいないだろう。「尾瀬」の定義や範囲にはっきりしたものはないが、伸びやかに広がる高層湿原、美林、咲き乱れる花、現代人の心をいやす道具立てが揃っている。また尾瀬と言えば木道(湿原を荒らさず歩くために厚い板を寝かせて作った道)、初心者でも安全に歩けるし、湿原に伸びるラインも人工物ながら尾瀬の景観に欠かせないものだ。

だが尾瀬の湿原風景を愛でるようになったのは近年のことである。少なくとも明治期以前は高地の湿原など不毛の地以外の何物でもなく、日本人の心に何の興趣も湧かせなかったに違いない。ために、尾瀬は電源開発の嵐に見舞われた。只見川に巨大なダムを築いて尾瀬ヶ原一帯をダム湖に沈める計画があったのだ。ただ、尾瀬が例の歌通りに下界から「遥か」であったことが幸いした。開発が進む前にニッポン人の自然景観への美意識が変わり、尾瀬の価値が見直され、ついに開発を免れたのである。

しかしこの1年、尾瀬は新たなる危機に見舞われている。先述した電源開発の経緯から、尾瀬一帯を所有しているのはかの東京電力。尾瀬の木道なども同社の社会事業の一環として整備されてきたのである。今のところ、同社は従来通り尾瀬の保護を行う方針のようだが、原発事故により巨額の賠償責任を負わされ、保護どころか尾瀬一帯を売り払わないとも限らない。戦争を挟みながら辛くも守られた貴重な自然を後世に残すことができるかどうかは、まさに尾瀬の自然を愛する者の注意力と行動に係っているわけだ。山岳ファンに限らず、広く国民に関心を持ってもらいたい。水芭蕉の無事なるを願いつつ。

◆おすすめコース
鳩待峠―山ノ鼻―見晴―尾瀬沼―沼山峠(5時間:初級向け)※きつい山登りのない定番コース。是非、途中の山小屋で1泊を。朝夕のムードは日中では味わえない値千金のもの。

4-02

燧ヶ岳と雪の尾瀬ヶ原

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図14「尾瀬」

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.