2008年4月15日(火曜日)[ メディアを問う ]

具体的「事実」の報道を

関東学院大学教授 丸山 重威

 イージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突、漁師親子が行方不明になっている事件は、自衛隊と防衛省の独善的な体質をさらけ出した。
 通報の遅れ、くるくる変わる説明、捜索や事態究明の遅さなど、どれを取り上げても、問題だ。
 国会が動き、メディアも事件を大きく取り上げている。だが、不思議なのは、この艦のウオッチ体制や当直士官の具体的な動きが、ほとんど報道されていないことだ。

 例えば、海上保安庁の捜査開始後、航海長がヘリで呼ばれ石破防衛相と会ったが、この航海長の名前、どこかに報道されているだろうか? 当直士官は交代時間だったそうだが、一体だれがだれに代わったのか? 操舵室で指揮を執っていたのはだれで、レーダー監視はどうなっていたのか? それ以外の幹部は…?
 列車事故でも飛行機事故でも、司令室や管制塔とのやりとりが記録されるが、それはどうなっているのか? 
 大体、艦船のイラストが出てきて、普通はだれがどこで、どういうウオッチをしているくらい新聞に載らないのはおかしくないか? そんなことは、防衛省記者ならすぐ取材できることではないのか?
 海上保安庁が捜査しているので接触できない、という。警察取材同様、夜回りでもして、ここを担当しているのはだれとだれだが、そのときはだれだったか、どうだったのか、くらい聞き出せそうなものだがどうしたのか?

 石破防衛相や海幕幹部などの責任が論じられている。しかし問題の本質は全く違う。そもそもイージス艦はミサイル防衛を名目にした建造費約千5百億円、全長165メートルの巨大艦。本当にそんなものが必要なのか、が論じられなければならない。だがその前提として、「事実」が報じられなければならない。
 こんな報道ぶりでは、軍部を批判できなくなった戦前と同じになりかねない。

 

「横浜市従」第1204号(2008年4月15日)より

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