2012年7月20日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第6山】槍ヶ岳 3,180m「ハイキングの終着点」

これほど分かりやすい山もないだろう。天を突き刺す槍の穂先は、一度見たら忘れられないシルエットである。山の見た目の印象深さでは富士山と双璧かもしれない。ただしその映像は真逆そのもの。悠然と鋭敏、横の広がりと縦の構図、平頭と峻峰と。

「槍」と聞くとどうしても先端の穂先に目が行きがちだが、穂先の大きさは全体からすればたいしたことはない。槍ヶ岳の山姿の真骨頂は、穂先を支える山全体にあるだろう。鎌尾根と呼ばれるギザギザの山稜を三方向に伸ばし、基部から岩稜が累々と積み重なる。山の下部には豊かな植生があり夏ならグリーンに染まるが、高い場所ほど緑のエリアが減って岩が増え、稜線直下では岩オンリーの世界となる。結果、全体として山の下部から上部へ向かって、緑から灰色へのグラデーションがラインを描く。さらに初夏の内は谷筋に残る残雪が強烈な彩りを添え、秋には下部の植生が赤黄色に染まり稜線には新雪のラインが加わってくる。これら込みで槍ヶ岳全体なのである。我々の目と脳は、目立つ先端にとどまらず、知らず知らず遥か山の基部までを含めた眺めを楽しんでいるわけだ。

槍ヶ岳のイメージが鮮烈な理由は、姿そのものばかりではない。置かれた位置も絶妙と言える。近くに覇を競うほどの高い山がない。南側こそ穂高連峰へと連なる3千mクラスの山稜が伸びるが、その他の方位、東・北・西は大きく抜けている。ちょうど船の舳先に付けているのが槍ヶ岳なのだ。まさに独壇場、だから目立つ。また周囲から目立つ山では、その反作用として山頂からの展望もまた見事だ。遮るもののない開けた空間いっぱいに展開する北アルプスの個性あふれる峰々。ニッポンの山の中でも1・2位を争う見事なパノラマと言っていい。

槍の穂先へ登るなど、その姿を見ただけで引いてしまいそうだが、梯子や鎖が完備していて慎重に登れば誰でも危険はない。高尾山に始まるハイキングの取りあえずの終着目標として、槍ヶ岳にチャレンジしてみては如何だろう。

◆おすすめコース
新穂高温泉-槍平(泊)-槍ヶ岳(肩の小屋泊)-槍沢-徳沢-上高地(計20時間:中級向け)※槍ヶ岳を東西に横断する、無理のないゴールデンルート。

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(上の写真)燕岳方面から見た槍ヶ岳。クリックすると大きく表示します。

◆参考地図・ガイド
◎昭文社:山と高原地図37「槍ヶ岳・穂高岳」

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