2012年9月21日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第9山】水晶岳 2,986m「幻の3000m」

測量の基準となるのが三角点であり、識別のため見晴らしのいい場所に設置される。山岳地帯では山頂が多いのだが、必ずしも最高点に設置されるわけではない。北アルプス最奥に位置する水晶岳は似通った背丈の2コブのピークから成るが、三角点は何故か低い方のピークに設置された。これが登山ブームとなった後に物議を醸すことになる。

水晶岳の標高は、三角点のある低い峰の2987mで通ってきた。ところがその低い峰に立つと、高い方のピークが見た目で優に20mは高いように見えたのである。ならば高い峰は3000m超級ではないか。山のバイブル『日本百名山』にもそう書かれているし、地形図作成の総本山である国土地理院に「高い方のピークの標高を測ってくれ」と言う要望は多かったらしい。「たかが標高ごときに……」と思われるかもしれないが、ニッポンで3000m超の山は数えるほどしかなく、愛好家の思い入れは強い。たとえ一峰でも3000m峰が増えるというのは大ニュースなのである。

それで20年ほど前にニッポンの山全体の標高見直しが行われた際に、水晶岳の高い方のピークも正確に測量されることになり、いやが上にも期待が高まった。が、期待虚しく8m強高いだけの2986mどまり。見た目で20mも高そうな山が、なぜその半分以下の差でしかないのか。

背丈が同じくらいの人は自分よりも高く見える傾向がある。山も同様で標高が同一で近くの山なら、まず相方が高く見える。「近距離高見えの法則」とでも言うべきもので、これの応用で実体以上に高く見え、さらには3000m峰への心理的期待値も加わって倍の20m以上差に見えてしまったのではないだろうか。

もし期待通りに3000m級の山であったら、山そのものの格がぐんと上がっていたに違いない。そうなれば当然に登山者も増えていたはず。なにせ北ア最奥の山である。きついのに「登らねば」とのジレンマに悩む登山者の増加は吉であったか、凶であったか。遠方からでも印象深い、水晶岳の黒々とした2つのピークは何も語ってはくれないが。

◆おすすめコース
高瀬ダム‐烏帽子小屋(泊)水晶小屋(泊)‐双六池(泊)‐新穂高温泉(19時間:中級向け)※北アルプス最奥部の山だけあって最低2泊、通常3泊が必要。

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(上の写真)右端が水晶岳 (クリックすると大きく表示します。)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図35「鹿島槍・五竜岳」、37「槍ヶ岳・穂高岳」

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