2012年11月9日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第12山】大室山 1468m「ブナ林の方舟」

およそほとんどのニッポン人が毎日のように目にしていながら、その山名や山となりについては誰も知らない山、それが大室山である。同名の山はあちこちにあるのだが、今回のターゲットは富士山の北西山麓に位置する大室山を指す。

千円札の裏側を見ていただきたい。左側に富士山の絵柄が載っている。本栖湖からの眺めであるが、富士山裾野の左下方に、ナマコのようにわだかまる黒っぽい山がお分かりいただけよう。これこそが冒頭の大室山なのである。一番よく使うお札だから誰しも目にしてはいるはず。ところが富士山の姿は気に留めても、周辺の山など模様にしか過ぎない。山好きな人でも、この大室山に気付いている人は稀だろう。

さらには、この図柄は歴史が古い。現行の日本銀行券の一代前、新渡戸稲造の五千円札裏面にも、本栖湖からの富士山が描かれており、大室山もしっかりと載っていた。通算すれば実に30年にわたって、広くニッポン人の目に触れてきた山ということになる。

大室山は自然観察の点からも実に興味深い。かの有名な青木ヶ原樹海にぽっかりと浮かぶように位置しており、針葉樹ばかりの樹海の中で、孤島のようにブナ林が見られるエリアなのだ。富士北麓一帯は、かつてはブナの原生林が広がっていたのだが、平安時代の富士噴火による溶岩流のために全滅してしまう。ところが大室山は一段高かったために溶岩に覆われずに済み、ブナ林が残されたのである。一方、荒涼とした溶岩台地には数百年の歳月を経て針葉樹林が成立し今日の樹海を形成した。ブナの樹にとって、大室山は正にノアの方舟であったのだ。

整備された登山道はない。道迷いで悪名高い富士樹海の真っ只中にあるので、地図がきちんと読めるリーダーが必要だ。山頂から展望はないが、下り気味に南下した三角点ピーク付近からは、さえぎるもののない富士山の眺めが圧巻。数多い富士山のビュースポットで、ご本尊に最も肉薄するのが大室山なのである。

◆おすすめコース
紅葉台入口-富士風穴-大室山(4時間:上級向け)※山の北側から取り付くことになるが、現地で地形と地図を見ながら登り口を判断する必要がある。山麓からの標高差が300m程なので体力的には問題ない。

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(上の写真)のっそりした山容の大室山 (クリックすると大きく表示します。)

◆参考地図・ガイド ◎国土地理院2万5千分の1地形図「鳴沢」

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