2012年12月24日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第15山】高千穂峰 1,574m「天孫降臨と龍馬」

かの坂本龍馬が妻・おりょうと薩摩へ旅した際に登った山が、宮崎・鹿児島県境の高千穂峰である。この時の龍馬の旅は「ニッポン最初の新婚旅行」などと評されるが、信仰登山が当たり前であった当時にあって、純粋に「山に登りたい」がために登頂した点において、「史上初」とは言えないまでも、近代登山精神の走りということもできる。

龍馬の登山には歴史思想的に突き抜けたような明るさがあるが、明治期以降の高千穂峰は重苦しいムードを背負うようになる。古来、天孫降臨の山として知られ、山頂にはその証たる「天の逆鉾」が立つ。神話に基づく、皇室ゆかりの聖山というわけで、戦前までは不敬の念での登頂など許されない、といった雰囲気すらあったのだ。幕末から明治初期にかけて自由であったニッポン精神が、昭和に至って暗部に押し込められ閉塞していく時代の趨勢の一端を、ひとつの山にも見ることができるわけである。

幸いにして今のところ高千穂登山は、思想的にも自由である。そこで素直な目で見てみても、やはり高千穂峰は姿がいい。噴火歴の浅い、原形をよく留めた火山ではあるが、単純ではなく主峰の両脇に支峰を配しシルエットが絶品。「神々しい」という陳腐な褒め言葉がこれほど似合う山もなく、古事記に伝説として現れるのも姿を見れば誰しも納得がいくだろう。

それでは登山開始。初めは樹林帯だが、やがて岩の中に砂の混じる道となって足元はズルズル、「三歩進んで二歩下がる」状態になって難儀する内、火口跡である御鉢に出る。火口の大きさ・深さにも息を飲むが、生育には不向きな筈の火口壁に、びっしりと群れるミヤマキリシマ(ツツジやサツキの仲間)の群落には生命力の強さ・神秘を感じずにいられない。六月の開花期には火口一帯がピンク色に染まることになる。
火口壁上のルートでは、左右に火山地形の大パノラマを満喫しながらの稜線漫歩になる。最後の一山を登りきれば待望の山頂に着く。一番の高みにコンクリートで固定された、天の逆鉾が突き刺さる。逆鉾を右に見て遠く桜島の噴煙を望めば、気分はそのまま龍馬である。

◆おすすめコース
高千穂河原‐御鉢‐高千穂峰(往復四時間:中級向け)※南国の山なので降雪直後以外なら冬でも登れる。

1325-yamayama

(上の写真)高千穂峰を下る、正面は御鉢(クリックすると大きく表示します。)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図58「霧島・開聞岳」

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