2013年3月8日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第19山】雲取山 2,017m「最高峰の変転」

東京都の最高峰をご存じだろうか。その名も雲取山。都心部大手町からの距離は76.8㎞。都道府県の中心地から管内の最高峰までの距離では、全国で8番目に長い。面積では下から3番目の東京都が8位にランクインしているのは、東西に長い都域の東端に都心部、西端に最高峰が位置するが故だ。小さな人が一生懸命背伸びして「手の先から足のつま先まで測ってくれ」といっているようなもの。

雲取山は決して格好いい山ではない。アルペン的でも雄大な火山でもなく、遥かなる山並みの一突起といった感じで目立たない。にもかかわらず一般の人にもそれなりに知名度が高いのは、ひとえに「都の最高峰」なるがゆえだろう。なにせ「都」の持つ意味合い・響きは別格である。警察組織は〇〇県警ではなく唯一「警視庁」を名乗っているし、全国の知事選の中でも都知事選の注目度は図抜けている。その「オンリー1」である都の最高峰なのであるから、山としての格も上がろうというものだ。

ところが、雲取山は絶対的な都最高峰であるのかというとそうともいえない。明治初期、雲取山を含む三多摩地域は神奈川県に属していた。それがきわめて政治的な思惑から、明治26年に三多摩郡が当時の東京府に編入され、その後に東京都となった。

歴史に「たられば」は禁句と言うが、もし三多摩地域が現在も神奈川県であったら、当然に雲取山は都最高峰の栄誉を失う。神奈川県最高峰が、現行の丹沢・蛭ヶ岳でなく雲取山であったわけだ。ただそうなると「都」から外れた雲取山の相対的知名度は今よりも低かったに違いない。

雲取山は山頂の展望が最大の売りである。見ごろは初冬。富士山や南アルプスの眺めも見事だが、遠く房総半島や三浦半島の狭間で東京湾や相模湾が光る様が鮮やかだ。距離は遠くとも首都に密接した山であることが実感できる。そして山頂からの達観では、東京も神奈川も混然としている。どちらに所属するかなど、人間界で決められた些事に過ぎない。俗界を遠く見下ろしつつ、山は悠久にそびえるのみである。

◆おすすめコース
鴨沢‐雲取山‐石尾根
‐奥多摩駅(14時間:中級向け)※山頂付近の小屋泊まりで是非ご来光を仰ぎたい。下山は長いが石尾根がお奨め。

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(上の写真)七ツ石山からの雲取山、平凡な風情(クリックすると大きく表示します。)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図25「雲取山・両神山」、◎山と渓谷社:新・分県登山ガイド「東京都の山」

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