2013年4月16日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第22山】涸沢 約2,300m「ヒマラヤと紅葉と」

ヒマラヤ登山と言えば、澄み渡る青空の下、氷河の上に設けられたベースキャンプになびく色とりどりタルチョの旗(チベット仏教の祈祷旗)、周囲にそびえる氷雪に覆われたジャイアンツ(巨峰)などなどが思い浮かぶ。されど「ヒマラヤはあまりに遠し……」で、ニッポンの山でこの情景に最も似通っている所を探してみると、それはゴールデンウィーク前後の北アルプス涸沢の景観だろう。

涸沢は、上高地から梓川をさかのぼり、穂高連峰に囲まれたニッポン有数のカール地形(氷河の名残り地形)に広がる高山帯である。険しい岩峰連なる穂高と、対照的に丸くゆったりとしたカール地形のコラボが、ニッポン離れした山岳風景を展開する。GW時分は未だ一面の銀世界であり、そこにヒマラヤらしさを見ることができるのだ。

カール地形は、元々が氷河であるので、氷雪に覆われた時期なら見た目は現役の氷河に近い。そこまで交通機関の終点である上高地から丸1日かけて歩くのは、ベースキャンプへのキャラバンの気分だ。辿り着いた涸沢では、ミニサイズながらも氷雪の岩峰・穂高に囲まれ、各国ならぬ全国諸団体のカラフルなテントがひしめきあい、タルチョの旗の代わりにあちこちで小さな鯉幟がはためく、といった具合で、気分だけならプチヒマラヤなのである。

一方、涸沢の四季で最も有名なのが秋の紅葉シーズンである。ここの紅葉の美しさはニッポン有数というしかない。広やかなカール地形で、全体を一望できること、樹々の葉を痛める山岳地帯特有の強風がカールの壁で遮られ気味であること。ナナカマドなど特に鮮やかに色づく葉が多いこと。そして初秋の寒波に伴う急激な冷え込みによって、稜線から山麓までの高度差が一気に色づくこと、などが挙げられる。

早春と盛秋で全く異なる至高の山岳美を堪能できるのも涸沢ならでは。この点ばかりは氷雪に閉じ込められたヒマラヤの高山帯では及びもつかない。四季による同一地形の劇的な変化こそ、ニッポンの山岳美の真骨頂であり、そのことを最も鮮やかにわからせてくれるのが涸沢なのである。

◆おすすめコース
上高地-横尾-涸沢(片道6時間:中級向け)※GW頃は雪山装備必携。紅葉期は大混雑を覚悟のこと。

1336-yamayama

(上の写真)GW期の涸沢と奥穂高岳(背後)(クリックすると大きく表示します。)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図37「槍ヶ岳・穂高岳」

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