2013年5月20日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第24山】八ヶ岳 2,899m「岩峰と裾野のコラボ」

山岳美を代表する景観は、雄大な裾野を引く火山か、岩が織りなすアルペン的な峻峰に大別される。本来、二律背反する筈の要素を併せ持っているのが八ヶ岳だ。少し離れて見てみると、火山性の裾野のラインが何本も引き絞られていって、その果ての絶頂部に険しい岩峰となって収斂していく様がよくわかる。柔と剛との見事なまでのコラボレーション、八ヶ岳の山姿の真骨頂といえよう。

八ヶ岳には富士山との背比べ伝説がある。その昔、八ヶ岳は今よりもずっと高く、ある時、双方の神様が語らって背比べをすることになった。両山頂に樋を渡して水を流したところ(何とアナログで素直な計測法だろう!)、八ヶ岳の方が高いと判明、怒った富士山の神様が八ヶ岳を蹴とばしたところ(棒でたたいた、という説もある)、山頂部が砕けてギザギザになり背丈も縮んでしまった、というお話。いやはや富士山の神様はとんでもない暴れん坊だが、この話、あながち荒唐無稽で片付けられない。以下は地質学の話。

写真をご覧いただきたい。山の左右の裾野をそのまま上へ伸ばして富士山型のシルエットを描いてみると、相当な高さになる事が予想できよう。実際、今から二〇年万年ほど前、八ヶ岳の中心部には堂々たる富士山型の成層火山がそびえていて、その高さは四千mを越えていたと言う。が、高い火山の宿命で一気に崩壊、甚大な山崩れを起こして、残った峰々が今日の八ヶ岳の主峰群となったのである。

赤岳・阿弥陀岳、権現岳、どれもが一国一城の主たる風格を持ったイケメンぞろいだ。

昨今、富士山噴火や山体崩壊の危険性が喧伝されているが、もし古代八ヶ岳の崩壊が現代に起これば、激烈な大災害となっていたことは間違いない。崩壊物は甲府盆地にまで流れ込んできたのであるから。一方、カタストロフィーの後に残された峰が、風雨にさらされ適度に練れて、現代人好みの険しい岩峰の数々となった。災厄が人の魂を揺さぶるような美観を創造したわけで、神の手になる造形の何と厳しく劇的なことか。八ヶ岳の裾野と岩峰の見事な融合を見るたびに、こんなことを考えてしまうのである。

◆おすすめコース
美濃戸口-赤岳鉱泉-赤岳(八ヶ岳の最高峰)(8時間:中級向け)※八ヶ岳は懐の深い山なので、初心者からベテランまで技量・力量に応じたルートを提供してくれる。

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<上の写真>八ヶ岳の全貌(甲斐駒ヶ岳から)。クリックすると大きく表示します。

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図32「八ヶ岳」

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