2013年7月2日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第27山】白馬岳2,932m「ネーミングの印象」

北アルプスの中でも白馬岳は、明治の頃から根強い人気を誇る。今では山頂近くにある2軒の山小屋の収容人員は2千人を超える。夏でも雪の詰まった、沢沿いの大雪渓ルートは登山者の行列が線のように連なる。

かような人気の秘密はどこにあるのだろう。秋まで雪の消えない大雪渓、雪渓周辺や山頂一帯を埋め尽くす色とりどりのお花畑(天然の花園)、キリッとしたイケメンな山姿、山頂からの大パノラマ。一通りの山岳美をあまねく備え、かつ奥山ではないので主要交通機関からのアプローチが良いことも見逃せまい。

もうひとつ白馬岳の人気の源は、山名の格好良さにもあるのではないだろうか。実はこれ、「はくばだけ」ではなく「しろうまだけ」と読む。農耕での田起こしに使う代掻き馬の雪型が早春の山頂近くに現れることからこの名が付いたので「しろうま」が正しい読みなのだが、漢字に白馬の字を宛てたことがこの山、ひいては広く周辺の運命まで決定づけることになる。耳触りが良い上に、イメージがいい。山麓一帯の地名その他は「はくば」読みが当たり前になり、観光地として大繁盛するに至った。山だけが「しろうま」に固執しているが、古来名前とは遷ろうものであり、将来的にはどうなるかわからない。

名前からすると明るいイメージの強い白馬岳だが、反面なかなか危険な山でもある。毎年のように遭難が発生し犠牲者の数も少なくない。大雪渓は春まで雪崩の巣であるし、稜線上で山の経験豊富な医師のグループが集団遭難した事故は記憶に新しい。夏の大雪渓も落石が多く、大勢が登っているからと言って油断はできない。地形の険しさに加え日本海に近く天候が急変しやすいことが要因だ。

それなりの山であるのに、名前の印象から安易に登山してしまう側面はあるかもしれない。もし白馬岳ではなく、近隣の山名である「不帰岳」とか、白馬ならぬ「黒馬岳」などであったら、山への緊張感が高まり今ほど事故が多くはなかったのでは、と思うのだ。反面、とても今日の様な繁盛ぶりは見込めなかっただろう。山の人気と危険は表裏一体なのである。

◆おすすめコース
猿倉―大雪渓―白馬山荘(泊)―白馬岳―白馬大池―栂池(12時間:中級向け)※逆回りは大雪渓が下りになるので歩きにくい

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(上の写真)白馬岳(左)と旭岳 朝日平から。クリックすると大きく表示します。

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図34「白馬岳」

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