2013年11月6日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第34山】ニペソツ山2013m「百名山になり逃した山」

今や山登りのバイブルとなったのが作家の故深田久弥が著した『日本百名山』である。当初こそ彼個人の思い入れで選定したものだったが、登山ブームという時流に乗り普遍的な価値を得た。今日では地域経済にまで影響を及ぼすなど、社会現象となった観がある。

さて『日本百名山』は深田個人がある程度山を登った後で選定したものであるから、著した後に初めて登った山も当然ながらある。中には「この山を選んでおけば良かった」と述懐した山もいくつか存在する。その代表格が北海道は東大雪の主峰・ニペソツ山なのだ。北海道には珍しいアルペン的風貌を帯びた山で、東面には垂壁が連なり、ピークは天に突き刺さんばかりの鋭鋒となっている。周囲の山とは距離を置いており、どっしりとした山体から一気に山頂の槍へと胸がすくような気持ちいいスカイラインを描く。本州の高峰でも類例がなく、まさに北辺の孤高の峰といった趣が濃厚なのである。

結構きつい山だ。途中、三つのピークを越えねばならず登り返しも多い。登って暫くは本峰がなかなか見えない。ようやく二つ目のピーク・前天狗で劇的に目の前に現れる。想像以上の、写真で見た以上の、シャープで骨太の山姿。全くの不意打ち登場なので余計に感動する。かの深田久弥を後悔せしめたのも正にこの眺めであったのだ。

最後の最後に300mというランドマークタワー一棟分の登り返しが待っている。孤高の峰だけに山頂からの大パノラマは申し分ない。北海道らしい伸びやかな景観が広がるが、なにより印象深いのは、東西の足元に広がる平地を埋める膨大な原生林だろう。本州以南では平地は何らかの開発が及び、パッチワーク状になっている。それがここからは樹林一色なのである。山のスタイルと並ぶ、ニペソツ登山の双璧といっていい。実は深田久弥は、山頂では霧に覆われこの眺めには接していない。山の姿には感動したものの結局は百名山の差し替えまでには至らなかったのだが、もしこの展望にも接していたら、と楽しい想像をしてしまうのである。おっと、標高の数字にもご注目を。こちらは来年の登山では意味がなくなってしまうのだが。

◆おすすめコース
杉沢出会―前天狗―ニペソツ山(往復10時間:中級向け)※日帰り圏ギリギリなので暗い内に車で登山口に乗りつけることが必要。

1354-2

これぞ前天狗からのニペソツ山(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図3「大雪山・十勝岳・幌尻岳」

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