2013年11月25日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第35山】牛奥ノ雁ヶ腹摺山(うしおくのがんがはらすりやま)1994m「寿限無………の山」

ニッポン一短い山名は?……漢字一文字、読み二文字、甲信国境に位置する「槍」なる山ではないかと思う。では一番長い名前は?それが本稿の主人公・牛奥ノ雁ヶ腹摺山である。実に一四文字。しかもちゃんと国土地理院の地形図に載っている。ローカル名ならもっと長い山名もあるかもしれないが、国家公認となると、この山のトップの座は揺るがないだろう。因みに第二位は、トップに二文字も離され一二文字。北海道は日高山脈のカムイエクウチカウシ山とコイカクシュサツナイ岳、どちらも舌をかみそうな名前だがアイヌ語に起因するもの。もうひとつが彼の山の兄弟分である笹子雁ヶ腹摺山だ。

実は雁ヶ腹摺山なる山は著名なものだけで三つが存在する。これまで挙げた二山に加え、本家とも言うべきズバリ「雁ヶ腹摺山」。牛奥・笹子とオマケがつく両山は山麓の地域名を冠して本家と区別させたものである。何れも山梨県東部の近隣に位置するから、この地域独特の名称なのだろう。元となる名前が長かった上に、区別のための地域名もそこそこの字数ゆえに、ニッポン一長い山名が生まれたわけで、もちろん偶然の産物だ。なにかにつけ地域おこしのために話題を作りたがる昨今の風潮とは無縁の時代の話である。ともあれ、どことなく詩的な風情が漂う名前ではある。雁の群れが腹をこするようにギリギリのラインを描きつつ山稜を越えていく。日本画のモチーフに絶好のイメージが浮かんでくるというものだ。

ただ、こういう話題先行型のケースでは、肝心のご本尊はたいしたことがないことが多いものだが、この山は登山の対象としても実に興味深い。直接の登路はなく、大菩薩峠方面から遥々縦走してくることになる。ゆったりした山並みに森林と笹原が交互に現れ、両者のコントラストや雄大な展望が次々と展開する様が辿る者を飽きさせない。さらにはこの稜線は、羊羹を横に立てていつくか並べたようで、遠目にも分かりやすい。空気が澄んでいれば横浜からでも指摘できる。その中に、ニッポン一長い名前の山が含まれていようとは、どこか痛快なことのように思えてしまうのである。

◆おすすめコース
大菩薩峠―牛奥ノ雁ヶ腹摺山―湯ノ沢峠(5時間:初級向け)※冬でも雪山初心者向きの格好のフィールドである。

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霧氷に覆われた笹原と樹林が織りなす縦走コース(11月)(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図24「大菩薩嶺」

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