2013年12月4日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第36山】塩見岳3,052m「稀代のダークヒーロー」

南アルプスのほぼ中央、ヘソに位置する山である。ニッポンでは貴重な堂々たる3000m峰でありながら、どことなく控えめな山だ。

冬の甲府盆地から、南アルプスの高峰が白銀をきらめかせながらズラリ並ぶ山岳風景が圧巻だが、塩見岳は頭をちょこんと出している程度。また、同じ南アルプスの山中でも、少し離れた山からの眺めでは、背後により高い山が重なるせいもあって、ちょっと情けなく見えてしまうのだ。

そんな、遠方からでは大人しい塩見岳も、接近して眺めると俄然存在感を発揮してくる(左写真)。ゴツゴツとした岩の要塞の様な風貌に加え、シルエットがぐんと天空にせり上がるのである。ドーム状の最高部は昔から鉄兜に模せられてきた。が、トップのみならず、それに続く下部を併せて想像を逞しくしてほしい。映画『スター・ウォーズ』の敵役、ダース・ベイダーのイメージが浮かんでこないだろうか。

山頂ドームは頭部マスクそのまま、両脇の小岩峰はいからせた肩、そこから左右に延びる稜線は黒いマントをひるがえしているよう。これで衣装関連はバッチリだ。そして小道具。向かって右の肩から下方に、ざっくりと崩壊した岩場が一直線に延びているのは、ベイダー得意のライトセーバー(電光剣)とみなしては如何だろう。つまりこの写真は、戦闘シーンのベイダーが、腰から肩へ中段に構えたセーバーで、今にも相方に切り掛ろうとしているポーズなのである。

晴れている時の情景でもこの迫力だ。これで背後に黒雲が湧きあがり、雷鳴でも聞こえてこようものなら威圧感は数倍。「貴様たちにフォースの威力を思い知らせてやる!」と、例の声で大喝されているような気分に陥るに違いない。

そもそもダース・ベイダーのコスチュームは、ニッポンの戦国時代の甲冑がモデルになっているとも聞く。モデルを擁するその国に、似ている山があるというのも何かの因縁だろう。ともあれ塩見岳とは、遠目には通行人役風情でも、その懐に入れば個性あり過ぎのダークヒーローに変貌する。いやはや、役者ですなぁ。

◆おすすめコース
鳥倉登山口―三伏峠―塩見岳(往復13時間:中級向け)※ただし本文の様な山姿に接するには、三伏峠からは塩見岳とは逆の方向に辿り、烏帽子岳・前河内岳から眺めると良い。

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ダース・ベイダーの威容、前河内岳から(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図44「塩見・赤石・聖岳」

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