2014年6月4日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第47山】蔵王山 1,841m「殿は忘れずの山」

蔵王と言えば冬の樹氷で有名だが、夏にも御釜という絶対的な観光ポイントを持っている。日に何度も色が変わることから五色沼とも称され、水を湛える火口周辺の無機質な模様と相まって、独特の色彩風景を作り上げている。

蔵王の最高峰・熊野岳はバス停近隣の御釜に近いため、天候が良ければ散歩感覚で登頂でき、バリバリの登山派には物足りない。が、蔵王本来の良さは南北に延びる山脈全体にある。とりわけ南方、南蔵王と呼ばれる山々が素晴らしい。

観光客溢れる御釜周辺から一歩南へ足を踏み入れると、一転して静寂な自然境となる。杉ケ峰や屏風岳など緩やかなピークが連なるが、山と山との間に広がる湿原の数々が見事だ。針葉樹の林が点在する中を埋めるように、緩やかな傾斜の、目にも鮮やかな草地が広がっている。最大の湿原を芝草平と呼ぶ。とりわけ初夏がいい。ワタスゲやチングルマなど、おなじみの湿原の花々が点々と彩り、群がる池の水面は明るい陽光を反射して眩しい。木道のベンチに座って目をつぶれば、鳥の語らいだけが優しくそして鮮やかに耳に響いてくる。1年中で最も生気に溢れた時期の山の営みを、五感を通じて身体いっぱいに感じることができるのである。

たおやかな山の連なりもやがてはアルペン的な切り立った鋭鋒も混じるようになる。そして最後を締めくくるのが不忘山。枕草子に「山は………わすれずの山……」と書かれた由緒正しき山である(清少納言の夫が陸奥守で、任地がこの近くにもあったのだろう)。そしてこの不忘山を以って山脈は忽然と終了する。急角度で一気に平地に没していくのである。蔵王連峰、なんとも潔いではないか。

もうひとつ、ここの山頂直下には印象的なモニュメントがある。その名も「不忘の碑」。この地に墜落した米軍パイロットを弔う碑だが、実は太平洋戦争で空襲に来た爆撃機の搭乗員である。敵軍の人殺しの当事者でも丁重に扱う度量、これぞニッポン人、いや広く人類に求められる寛容の精神だ。今日の外交その他に、なにより生かすべき理念であることを忘れずにおきたいものである。

◆おすすめコース
刈田峠―屏風山―不忘山―白石スキー場(5時間30分:中級向け)※朝の早い時間にタクシー等で出発点に乗り付けたい。

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南蔵王の湿原風景(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図7「蔵王」

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