2014年7月22日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第50山】北アルプス① 「夏と冬の劇的な落差」

間もなく夏山シーズン、この夏は北アルプス登山とお考えの方も多かろう。山頂からの絶景、険しい岩場、山上のお花畑など、夏山のあらゆる魅力が濃密に配された山脈だ。だが、実は世界的に見て特異な特徴を備えた「当たり前ではない」山脈だとしたら……。

夏の北アルプスは、そこそこの体力さえあれば、高齢者でも小学生でも核心部の稜線歩きを楽しむことができる。ところが冬山となると、山麓近い前山は元より、奥山縦走など一流クライマーでも二の足を踏むような厳しいエリアに変貌する。この著しい落差をもたらしているのは、冬季の豪雪と強風にある。日本海側の積雪が世界有数であることは周知の通りだが、冬の風の強さでも、同一標高で比べれば世界一である。二つのジェット気流がニッポン上空で収束するため、3000m級の北アルプスでもヒマラヤの6000m級に匹敵する様な強風が吹き荒れるのだ。

雪と風、この両者が相まって、冬にはヒマラヤもかくやと言うような厳しい気象条件となり、人を寄せ付けない。ヒマラヤのエキスパートでも冬の北アルプスの奥山には格別の覚悟と準備で入山するという。

さらに北アルプスが面白いのは、こんな極限のエリアが、賑わう町(富山とか松本とか)のごく近くに位置することだ。世界的な極地は町からはとんでもなく遠く離れているのが当たり前。それが極地・北アは町の裏山に過ぎないのである。日常と極地が、かほどに隣接しているという点でも特異地帯と言う他ない。

冬の雪が多い割には、中緯度で標高も低いニッポンの山は、夏季には高温になり雪がよく溶ける。このため誰でも登りやすくなる。なにせ町の裏山だからアプローチも楽。車やケーブルで入山し、半日も歩けばそこはもう核心部の稜線。冬ならごく一部の者にしか許されないのと同じ地形が、雪を振り落してハイカーの目を楽しませてくれるというわけだ。

ある同一地点で、一流の冒険家しか立入が許されない領域が、季節によっては子供でも辿れるようになる所など、世界中でどれほどあることか。

「小学生からトップクライマーまで」
世界に売り出すなら、これを北アルプスのキャッチフレーズにしてみてはいかがだろう。(次号に続く)

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北アルプス最奥部の水晶岳へ向かう軽装の登山者、冬ならとんでもないエリア(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図33「日本アルプス総図」→北アルプス全体を概観するには最適

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