2014年9月19日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第53山】針ノ木岳2820m、蓮華岳2788m「針ノ木峠を巡る山々」

佐々成政という戦国武将をご存じだろうか。信長に仕え、信長の死後は秀吉に対抗、浜松にいた家康と組むべく画策したが、居城のあった越中周辺は殆どが秀吉方の領分。そこで、唯一囲みの無かった冬の北アルプス越えを敢行。黒部川を渡り針ノ木峠を越え、家康領の信州に出て浜松へ。もっとも厳冬期とあっては現代の一流登山家が最新装備で挑んでもどうかという程の難ルート。近年では成政が超えたのは北アルプス南部の別の峠ではないかとの説も提示されている。

真偽はともあれ、歴史ロマンの舞台であった針ノ木峠は、北アルプスのほぼ中央に位置する。明治時代には荷車が通行できるほどの道路が造られたが、厳しい気象のため数年で放棄。現代では、観光で鳴る立山黒部アルペンルートの入口・扇沢にほど近い。峠からは東西に針ノ木岳・蓮華岳が妍を競い、峠を挟んで対照の妙味を醸し出している。

標高の高い方は針ノ木岳。険しくそびえる鋭鋒であり、山頂からは北アルプスのヘソに相応しい大パノラマが広がる。中でも素晴らしいのは立山連峰で、紺碧の水を湛える黒部湖を山麓遥か下に配し、岩壁がなす峰として屹立する姿は惚れ惚れするくらいに見事。

一方、標高では劣るが図体が大きいのが蓮華岳だ。針ノ木岳とは対照的にゆったりとした長いスカイラインを引く。長大な稜線一帯は白っぽい明るい岩石で覆われ、シーズンには高山植物の女王と言われるコマクサが咲き乱れる。お花畑の稜線漫歩ムードを堪能できるのである。

少し離れて見てみると、針ノ木峠を仲人のようにして、両峰が仲良く並んでいる姿が印象的だ。古典的なジェンダーイメージからすると、針ノ木岳は雄山、蓮華岳は雌山と位置付ければしっくりくる。全国で二峰をペアに見立てた夫婦峰は数多いが、ここの二峰はペアとしては格別注目されてはいない。だが、標高の高いことといい姿といい、ペア峰の代表格に認定してはいかがだろうか。

歴史ロマンと現代の夫婦峰と。ドライなイメージ先行の北アルプスにあって、針ノ木峠周辺は人間味あふれるエリアなのである。

◆おすすめコース
扇沢-針ノ木大雪渓-針ノ木峠(泊)針ノ木岳と蓮華岳ピストン-扇沢(12時間:中級向け)※針ノ木大雪渓はかなり急峻、夏季でもアイゼンとストックが必携。

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針ノ木岳(右)と蓮華岳(左)、中央の落ち込んだ所が針ノ木峠(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図35「鹿島槍・五竜岳」

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