2014年10月3日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第54山】剱岳2999m「登るなら早月尾根」

剱岳といえば、新田次郎原作、木村大作監督作品の映画「劔岳点の記」が大ヒットして、山登りに親しまない人の間でも有名になった。ただ、明治時代なのに昭和期のザックを背負っていたり、山上であんなにガツガツ歩いたらすぐにバテてしまうなど、山にうるさい人からすれば突っ込み所も多かったようだ。ともあれ、ニッポンにもこんな壮絶な雪山風景があったのかと、イメージを新たにした人は多かったに違いない。

さて、剱岳は日本百名山の中で最も登頂の難しい山の一つとされる。岩場の連続、鎖や梯子の数々。大概の人は立山・黒部アルペンルートの中枢である室堂からたどるのだが、実はもう1本、剱登山の真骨頂ともいうべきルートがある。その名は早月尾根。山麓から山頂まで二三〇〇m近い標高差を一気に突き上げるハードな行程だ。この高低差は日本アルプスでも最大級で、これに比肩しうるのは南アルプス甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根くらいのもの。

航空写真などを見てもこの尾根は圧巻。麓の河原から山頂に向かって、何物にも惑わされずに一直線に伸び上る様には胸がすく思いだ。中間にはオアシスの様に早月小屋が建ち、ここから見るゴジラの背中の様に連なる剱北方稜線の威容は特筆もの。遠方には富山湾・富山平野・能登半島、癒し系の眺めが美しい。

小屋から山頂までは岩場の連続となるが、緊張する鎖場などより、その前後のほっとするような場所で事故は起きがちだ。最後まで気を抜かずに歩きたい。

ピークからは北アルプスの大パノラマ、わけても足下の岩峰群の上に展開する後立山連峰が決まっている。外観のイメージと違って山頂は広いが、これまでの静かな行程から一変して大賑わい。室堂ルートから登る大半の登山者を併せるがゆえである。が、達成感が違う。室堂ルートもそれなりに長いが、スタートからして二四〇〇mもあるから、山から山への平行移動。我らが早月尾根こそが「山登りの王道」ではないか。

労力的にはきついが、岩場の難易度では室堂コースより一段易しい。往復とは言わないが、上り下りのどちらかにでも利用できれば、映画のテーマになったほどの名峰・剱岳の大きさ・偉大さを、肌身を持って体感できるだろう。

◆おすすめコース
馬場島-早月小屋(泊)-剱岳-剱沢-室堂(14時間:上級向け)※剱沢付近で、もう1泊すると余裕が持てる。できるだけ軽装で。

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早月小屋から見る剱北方の岩峰群(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図36「剱・立山」

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