2014年10月21日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第55山】御嶽3067m「事故その後」

周知の通り、御嶽は突如噴火してあまりにも多大な犠牲をもたらし、ニッポンの山岳遭難史上でも№2に記録されるほどの大惨事となってしまった(因みに第1位は、明治三五年に一九九名の犠牲者を出した、八甲田山の雪中行軍による遭難事故である)。

事故の大きさとは裏腹に、噴火の規模としてはごく小さいものだった。地下のマグマ本体の噴火ではなく、マグマの熱により地下水が沸騰した水蒸気爆発であったから、活動の規模も時間も限定されていた。致命的な危害が及ぶような噴火は20分足らず。にも拘らず、かような大惨事となったのは、噴火のタイミングが悪かったとしか言いようがない。秋の登山日和、しかも日帰り登山者が最も山頂に集中するお昼時であったからだ。これでもう数時間どちらかにずれていれば死者数は一桁少なかっただろう。もし夜間であれば、小屋の宿泊者は生きた心地はしなかったろうが、死者はおろかケガ人も殆ど出なかったに違いない。さらには冬の雪深い日であれば、山中に人影はなく、麓からは厚い雪雲の中で噴煙も見えず、農業被害もない。新聞の社会面の隅に「御嶽が小規模噴火」程度の記事で片付けられていたのではないだろうか。

今回の事故は登山者各自の資質や不注意によるものではない。例えが悪くて恐縮だが、登山者を満載したバスが谷底に転落したようなもので、何ら責めに帰すべき点はない。ところがあれほどまでにセンセーショナルであると、世間は過剰反応を示すもの。各地の火山で無闇に規制が強まったり、「道楽は自己責任で」などと登山者にあらぬ負担が課されるかもしれない。

だが火山災害は、登山者のみならず広く国民一般にも振りかかり得るものである。残念ながら事故が起きないと対策が進まないのが世の習い、至近距離の噴火への対処法はこれからスタンダード化されるだろう。また、登山届の未提出が捜索の障害になったことから、これまで徹底していなかった事前提出を促す転機となり、遭難者の減少に大いに資するはずである。結果、今般の教訓によって、一般の人でも登山関係者でも、今後の犠牲者をどれだけ減らせるか計り知れない。双方とも、事故を検証して対策を講じると共に、必要以上に火山を恐れないことが肝要だ。

平穏時の御嶽は眺めて実にどっしりとして雄大である。登ってみれば、複雑に絡み合う峰々の逍遥は楽しく、点在する池が癒しを与えてくれる。安んじて登れる日が再開されることを念願してやまない。

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ゴールデンウィーク頃の残雪の御嶽(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆マスコミその他では「御嶽山」と称するが、本稿ではシンプルに「御嶽」とした。参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図39「御嶽山」

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