2014年12月4日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第58山】七面山1989m「信仰登山体験に最適」

甲州身延山と言えば日蓮宗の大本山として有名だが、その背後にさらに高い山脈が連なり、最高峰・七面山は奥の院として古来修行の場として栄えてきた。徳川家康の側室であったお万の方が水垢離をすることで女人禁制が解かれたと言うから、富士山はじめ大半の山で禁制を敷いていた江戸時代にあっては大変開明的な山であったということになる。現在でも大半は信仰登山だが、純粋な登山目的でも通常の山歩きとは一味違った体験を堪能できる。

登路は二本を数えるが、信仰登山の気分を味わうなら表参道が良い。途中数か所に「〇〇坊」なる休憩所があり一息つくにはもってこい。登拝を終えて降りてくる白装束の講の集団と何度もすれ違う。挨拶は「今日は」ではなく「ご苦労様」。そんな挨拶をする暇もないくらい、お題目を唱えながら降りてくる団体も多い。講の先達の様な一人が「南無妙法蓮華経」と唱えると、続いて講の全員が同じく唱和する。デモのシュプレヒコールの様な間合いだが、棒読みではなくリズムと抑揚が利いているので聞いていて心地いい。

やがて数時間の苦行の果てに山上の霊場・敬慎院に辿り着く。これまでの急登が嘘の様な広大な境内、悠然と佇む豪壮な建物に息を飲む。千人を収容できる宿坊があり、信者以外でも安価に泊まれる。ただし肉や魚類は一切出ないし(般若湯=お酒はしっかり出されるが)、1時間ほどの夜の勤行には参加しなければならない。が、これも貴重な参籠体験、お経のみならず勇壮な太鼓もあり、言い知れぬ感動を覚える。敬虔な気持ちでお勤めに励みたい。

ハイライトは翌朝のご来光。遥拝台と称する展望広場があり、時には数百人の白装束の信者が一心に祈りをささげる様は壮観にして壮麗。富士山の背後から登ってくる朝日が何とも心憎い演出で、霊感体験にどれだけ多くの人を惹きつけてきたことか。

肝心の七面山は樹林に囲まれ展望はない。山歩きそのものも重視するのであれば、ここから南下して八紘嶺方面へ縦走すると良い。一転して人影は稀になり原生林の中を静かな山歩きが楽しめる。敬慎院に泊まれば丁度良い1日行程に収まるのも好都合だ。

◆おすすめコース
明浄院―敬慎院(泊)―七面山―八紘嶺―梅ヶ島温泉(11時間:中級向け、七面山までなら初級向け)

遥拝台を埋める信者と富士山

遥拝台を埋める信者と富士山(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図42「塩見・赤石・聖岳」

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