2015年2月2日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第61山】開聞(かいもん)岳924m「人文と歴史の記念碑」

九州は薩摩半島の南端に端正な円錐形の姿を見せてくれるのが開聞岳である。ランドマークとしての存在感は大きく、錦江湾の入口に門兵のように位置する姿から海門岳との別称もあるほどだ。平安時代の噴火で現在の高さにまで成長した若い火山だが、もう既に全山が濃い緑に覆われ、穏やかな姿を見せる。

開聞岳で最も特筆すべきは登山道かもしれない。円錐状の山体に、右巻き螺旋状にルートが付いている。地図を見ると北麓から渦を巻くように1周強で山頂に達する。実は、これほど大型の山で螺旋状の登山道がただ1本だけ付いている例は他にない。傾斜がある程度きついこと、谷が刻まれていないことなど、様々な条件が整っていることが必要で、標高差千m近い山で該当するのは奇跡的とすら言えよう。登山道も立派な文化財である。それがこの希少価値だ、自然人文遺産(なるものがあれば)に指定されてもおかしくない。

ルート上方で展望が開け、回り込むに従い、順に各方面の海が見える。山頂では樹林も多く残念ながら海側は見えづらいが、北側に横たわる池田湖が印象深い。

下山したら是非とも、小さな半島の先端・長崎の鼻に足を延ばそう。海越しの開聞岳の眺めが絶品。秀麗な山裾が波に洗われる姿を間近に眺められるのは、やはりこの山ならでは。たとえ登頂しても、この眺めに接しないと山としての魅力を堪能できたとはいえない。登るよりも眺めて良い山は、富士山はじめ秀麗な火山に多いが、開聞岳もまたその一典型なのである。

最後に、九州南端で際立つその姿は悲しい歴史も秘めている。大戦末期、知覧をはじめ特攻隊の基地が近かった。飛行場を飛び立った特攻機は開聞岳を目標に南転し、搭乗兵士は万感の思いで秀麗な山姿を目に焼き付けたと言う。他方、敗戦後に南方からの引き上げ船から最初に目に付く本土こそ、開聞岳である。生き延び還れたことを実感して、やはり熱いまなざしでこの山を凝視した引揚者も多かったに違いない。

開聞岳に登る時、眺める時、悲惨な過去にも思いを馳せてみたい。歴史遺産としても、記憶に留めておくべき山と認識できるだろう。

◆おすすめコース
登山口―山頂(往復5時間:初級向け)※標高は低いが登山口も低いので、意外に手間と時間を食う。

1396-yamayama

長崎の鼻から望む開聞岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図58「霧島・開聞岳」

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