2015年6月3日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第68山】日光白根山2578m、有明山2268m「運命のもたらす明暗」

日光白根山は、日光山群の最高峰である。膨大な山体の頂点に火山性の山頂ドームを形成し、直下には明るい五色沼を配した名峰だ。遮るもののない山頂の大展望は山岳世界の玉座にいるよう。中腹までゴンドラが掛かり、シーズンの休日ともなれば登山道も山頂も大賑わいとなる。

有明山は信州安曇野から、北アルプスの前面に特徴ある台形のピークを見せる。信濃富士の別称があり、西行法師の歌にも詠まれているほどの歴史ある山だ。中房温泉が登山口になるが、人気の燕岳方面へのルートの賑わいからすると、登山者は数百分の1に過ぎない。道はなかなか険しく、山麓に前泊してどうにか日帰りギリギリの長行程。山頂は台形の上端だけあって長大。山麓の安曇野や背後の北アルプスの眺めがいい。

場所も離れ山姿も異なる、一見何の関係もないこの両山、実は深い因縁がある。今やニッポンの山歩きのバイブルとも言える『日本百名山』に日光白根山は選定されている一方、有明山は選外だ。だが著者である作家の故深田久弥は有明山がお気に入りで、当初は百名山に内定していたのである。ところが深田本人は未登であったため、単行本の刊行時までには登っておこうと考えていたのだが、ルートの崩壊などで登れないことが判明。「登らぬ山は選定しない」と、自身に課した大原則があったので、泣く泣く百名山から除外、それに代わって滑り込ませたのが日光白根山というわけだ。

本が刊行された頃は、こんな一山程度の入れ替えなど、世間も深田本人も気にも留めていなかっただろう。だがその後に日本百名山は時流に乗り、地域経済にまで影響を及ぼす一種の社会現象となるに至ってしまう。要は百名山であるか否かで、山の知名度その他に雲泥の差がついてしまったのである。結果として日光白根山は押すな押すなの大盛況、一方の有明山は登山者も稀で静寂を保っている。もし百名山の選定を入れ替えてなければ、今日の両山の賑わい度は全く別のものになっていた筈なのだ。とは言え、人気を得て人が押し掛けるのが喜ばしいことなのかは、当の山に聞いてみなければわからないが。

◆おすすめコース
丸沼高原ゴンドラ―日光白根山(往復4時間半:初級向け)、中房温泉―有明山(往復7時間:中級向け)

68-2

68-1

台形すっきり有明山 五色沼からの日光白根山

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図13「日光」、37「槍ヶ岳・穂高岳」

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