2015年7月21日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第71山】栂海(つがみ)新道 2932m~0m「雪上歩きから海水浴へ」

1回の山歩きで雪を踏みしめ海水浴も味わう。こんな真逆な愉しみ方ができる有名なコースがある。

舞台は北アルプス。その主脈は槍や穂高を起点に数多の峰を連ねつつ、北の鎮めとも言うべき白馬岳に至る。そこから北へ高度を減じながら、いくつかの峰を起こした果てに、親不知にて海に没していく。白馬岳から親不知まで標高差は約3000m、そこの核心部に当たる長大な稜線ルート、それが今回のテーマを叶えてくれる栂海新道なのである。

白馬岳へは表玄関とも言うべき大雪渓を詰めることになる。盛夏でも雪上を渡る風は涼しく、雨天の日などは凍えそうになるほどだ。山頂直下の小屋で1泊目。翌朝、白馬山頂で無類の展望に満足したら遥か北方へと連なるルートに踏み出す。まずは雪倉岳一帯など、北アルプス有数のお花畑を次々と横切っていく。朝日岳周辺は深い針葉樹で覆われるが、そこを抜け出ると湿原の中に朝日小屋が建つ。ここで2泊目。

朝日岳を越えると人影は稀になり、栂海新道の核心部に踏み込む。広大に開けた湿原が連なり、起伏に富む緩やかな台地を乗り越えつつ進む。やがて尾根はやせ、山裾から広葉樹の森に埋まる。犬ヶ岳避難小屋で3泊目。

いよいよ最終日、登り返しは少なく下り基調となるが、実はこの日が一番苦しい。標高が低いから気温が上がり、500m以下ともなれば暑さは下界同然。樹林の下が多いが蒸し方が酷い。しかしここで暑ければ暑いほど、ラストのご褒美が輝きを増すことになる。

行動4日の果てに終点の親不知に着く。急な階段を石砂利の海岸まで下る。波が穏やかなら靴だけ脱いで着の身着のまま海中へザブーン。このねっとりした気持ちよさはどうだろう。暑体験の果てのせいか、海水の感触が全く違うのだ。記憶のある筈もないが、母親の胎内で羊水に浸っているかのような。生涯でも唯一無比の水体験となるに違いない。温泉がすぐ近くにあるのもありがたい。

雪渓、お花畑、岩稜、針葉樹林、湿原、広葉樹林、そして海。栂海新道コースにはニッポンの自然の営みが一通り揃っている。雪上歩きから海水浴までを一本で体験できてしまえるのも、ニッポンの自然の、懐の深さのなせる技だろう。

◆おすすめコース
本文の通り(3泊4日:上級向け)※一番気を付けるべきは最終日の熱中症だろう。海は荒れ気味なら入るのは論外。穏やかであっても引き波があるので、背の立つ所までにしておいた方が無難。

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栂海新道中間部の湿原地帯にて(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図34「白馬岳」

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