2015年8月7日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第72山】大雪高原沼「究極の紅葉と庭園と大雪高原沼巡り」

全国レベルの優れた風景であっても、探訪者は地元に限られる山エリアがままある。北海道は大雪山の奥深くにある大雪高原沼巡りもその一例だろう。大小十数個の沼が起伏に富む複雑な地形に展開、それらを縫うように進む秀逸なコースだが、道外からここまで足を延ばす人は少ないようだ。

「沼巡り」などというと、物の怪でも出そうな鬱蒼としたルートを連想するかもしれないが、ここの沼群は深い樹林を抜けたところに展開するので、明るいイメージが強い。そしてなにより見事なのが秋の紅葉だ。沼畔を彩る多様で鮮烈なカラーの見事さは、ニッポン紅葉風景の中でも極め付けの白眉といっていい。

紅葉期は混雑のため登山基地に至る車道は通行止めとなり、手前に当たる大雪湖畔からシャトルバスが運行される。登山口からもすぐにルートには入れず、自然保護施設の中を通行するようになっていて、ここでクマ情報の講義を受けなければならない。いわば関所のようなものだが、それだけこの一帯はヒグマの高出没エリアと言える。

出発から1時間ほど歩くとお目当ての沼が次々に現れる。滝見沼・緑沼・えぞ沼・式部沼などの名前が付き、それぞれが個性的で背後の植生とあいまって絵になる風景を見せてくれる。さらに歩き進み、後半登場の大学沼・高原沼になると、大雪山の稜線やピークが借景に加わり雄大で広やかな景観となる。

ハイライトはラストに現れる空沼だ。その名の通り秋には水が涸れていることが多いが、伸びやかなグリーンの上に巨石群が絶妙の間合いで配され、京都辺りの庭園を見ているかのよう。自然の造形がたまたま人間の美術感覚と似通っているのか、人間が知らず知らず自然美を模倣しているのか、そんな哲学的思索に耽らせてしまうようなムードを漂わせているのである。

かつて30年ほど前は、紅葉のオンシーズンであっても人影はまばらで秘境の趣があったが、現在は道内限定の人気ではあっても飽和状態に近い。この上、内地でも有名になってしまうと入場制限が懸るのは必須だろう。などと言いつつ、本文もその一助になってしまうかもしれないが。

◆おすすめコース
コース一周(4時間:初級向け)※紅葉の最盛期は9月下旬だが、本当に見事な時期はごく短い上に年によって変動。強い寒気に遭うと一夜にして色褪せてしまう。

1413-02

庭園調の空沼。この時は水も湛えて、より絶景(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図3「大雪山」

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