2015年10月6日(火曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第75山】乗鞍岳 3026m「お手軽そうで実は深い山」

ニッポンに14座しかない3000m峰の内の貴重な一峰が乗鞍岳である。火山なのだが、元々の高い山脈の上に噴出したいわば「下駄ばき」であるから、火山体そのものの大きさはさほどでもない。さらには、せっかくの希少な3000m峰なのに、北隣には槍穂高の連嶺、南隣には御嶽と、より高い峰が目白押しで相対的に損をしている。なんとなく「影の薄い3000m峰」といった風なのだ。

一方で最も手軽に登れる3000m峰でもある。火山特有の緩い傾斜ゆえに2700mクラスまで車道が通い、そこから1時間余りで山頂に立てる。それを嘆く向きもあるが、山歩き的に頑健でない人にも容易に3000mの空気を提供してくれるわけで、いわばプチバリアフリーの山。その点はもっと尊重されていい。加えて平成15年からマイカー規制が始まり、山麓でシャトルバスに乗り換えなければならないから自然保護の面でも優等生だろう。

手軽に登れても山頂の眺めは絶佳。南には雄大な御嶽、北には槍穂高連峰が普段お馴染みのシルエットとは一味違った見え方なのがポイントだ。直下には、火山地特有の無機質な色彩の中で、ハート型の火口湖である権現池の紺碧の水が異彩を放つ。

ただやはり、ちょこっと登って山頂から眺めるだけでは山の全体像はつかめない。シンデレラ城だけを見てディズニーランドのすべてを語るようなもの。相応の体力のある人には、もっと全貌を知って欲しいところだ。で、真に乗鞍岳を極めるのなら飛騨高山側から登るに限る。標高差にして2000m以上、笹の刈り払いも不十分で途中の避難小屋に1泊しなければならない。が、森は深く美しく、稜線上の湿原は木道整備も不十分ながら殆ど荒れておらず、如何に人の少ないルートであるのかが分かる。山頂直下の大スロープ一面には濃緑一色のハイマツが広がり、高山植物も豊富で花の競演が美しい。

なにも見せ場は長大ルートばかりではない。東山麓の乗鞍高原温泉は湯量豊富で気軽な散策路が四通する。西山麓には、わが国で初めて予約定員制でガイド同行が必須となった、池巡り遊歩道もある。冒頭述べた影の薄さとは裏腹に、懐の深い変化に富んだ麗峰なのである。

◆おすすめコース
畳平―山頂(往復3時間:初級向け)、丸黒尾根または九蔵尾根―山頂(11時間:中上級向け)※長大ルートは寝具・食糧・水持参。

1418-4

長大ルートから、ハイマツの海にそびえる乗鞍岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図38「乗鞍高原」

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