第53回「山のいのち」
山のいのち
作:立松 和平
絵:伊勢 英子
ポプラ社
そろそろ夏休みも、折り返しが過ぎました。
猛暑も手伝って、戸外で遊ぶ姿が少なかった気がしますが、子どもたちは存分に夏の生活を満喫しているでしょうか。
きょうの主人公、静一は両親の海外出張のため、夏を田舎の祖父の家で過ごすことになります。
祖父は少し物忘れがあり、息子と孫を取り違えますが、しっかり1人で生活しています。 孫の静一は、人と話すのが苦手。学校をずっと休んでいます。
祖父が丹精した畑や山から獲れた新鮮なものを食べ、澄んだ空気や水、輝く緑やたくさんの鳥、魚に目を見張る静一。
ある朝、鶏小屋が荒らされ全滅します。中の木箱に捕まっていたのはイタチ。
毎日、卵を産んでいた鶏の代わりに祖父は「孫にごちそうしてやらなくちゃならないからしっかり働いてもらうよ」とイタチに言い、その木箱を川に持っていきます。
水に浸けながら…
《生きているものは悲しいなぁ。死ぬまでびくびくしてなぁ》とつぶやきます。
イタチはやがて動かなくなり、ナイフで裂かれて皮だけにされます。肉は川の生きものたちに。
最後に見届けた静一は、「かわいそうだね」と初めて口を開きます。それを、
《食べたり食べられたり、山の中は何もむだが無くて、全部がぐるぐるまわっているんだよ》と伝えます。
竹ざおの先に結わえたイタチの皮は、振り上げられ、川に叩きつけられ、水中を泳ぎ…。ヤマベを追い出す役目を得たイタチ。
静一は、この出来事をどう捉えたかは描かれていませんが、祖父の「命はぐるぐるまわっている」の言葉は胸に刻まれたのではないでしょうか。
立松さんの(こう生きたいものだ)という一連の著作に通じる、初めての絵本。
伊勢さんの絵は、第6回の「かさをささないシランさん」で取り上げ、再登場です(重ならないよう心掛けているのですが)。
諸事情で、帰郷がかなわなかったひとも多いようですが、子どもたちが、知恵のいっぱい詰まったおじいちゃんおばあちゃんから教わることを大切にできるといいですね。
「横浜市従」第1212号(2008年8月15日9月1日合併号)より




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