2015年12月18日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第80山】奥鐘山 1,543m「ニッポン1の大岩壁」

彼の偉大なる黒部ダムの下流には、我が国屈指の大峡谷が続き、谷の左右に大岩壁が連なる。なかでも最大のものが奥鐘山の西壁だ。山全体はその名の如く巨大な梵鐘の様な形状で、谷底から頂上付近まで高度差にして800mクラス。穂高・剱岳・谷川岳といった錚々たる岩壁群を凌ぎ、ニッポン一との評判が高い。

ただし岩壁登攀のクライマー以外で登る人は稀だ。裏からヤブを漕ぐしかないが山頂は展望もなく、なによりお目当ての大岩壁が見られない。鐘のてっぺんからでは、側面の模様が見られないであろうことは想像がつくだろう。幸い、岩壁を余すところなく眺める絶好の展望コースがある。その名は水平歩道。黒部の電源開発のために設けられた長大な人道である。

起点は観光名所でもある黒部峡谷鉄道の終点・欅平。初めはうんざりするような急登が続くが、やがてその名の通りの水平道となり、山地なのにアップダウンが殆どなくなる。岩壁の同じ高さの所を穿っているために、このようなスタイルになったのだが、今もなお送電線監視のために(株)関西電力によりきちんと整備されている。壁にはしっかりした針金が付いていて、捕まりながら歩いていけばまず危険はないが、崖側に柵は無い。不注意で転落すれば谷底まで100m以上、即死は間違いない。

前方の対岸には奥鐘山が凄まじい急角度で谷底に落ち込んでいる様が見て取れる。やがて谷を回り込む。支流を渡るのだが橋ではなく、谷を跨ぐ堰堤の中を通るトンネルを抜ける。天井は頭スレスレ、曲がっているので中は真っ暗、懐中電灯が必携だ。そこを抜け出ると周囲のムードはいよいよ雄大になり、正面には奥鐘山が惜しみなく大岩壁を晒してくれている。谷底から天上までなんと言う高さ、迫力。ことに盛秋期なら灰色の岩肌が錦繍に彩られ、凄味のある美しさで魅せてくれる。およそニッポン中の岸壁の中で、ここほど絶好の角度・距離で見られる場所は他にはないだろう。

「大太鼓」の看板を見たら往路を引き返す。行きよりもコース慣れしてくるが、事故は気の緩んだラストに起きやすい。最後まで気を抜かないことだ。終点で緊張から解放されれば、岩壁登攀を終えたクライマーの気分が少しはわかるかも。

◆おすすめコース
欅平―大太鼓(往復6時間:中級向け)※さらに山中泊なら、剱岳方面や黒部ダム(10月頃の限定)まで足を伸ばせる。

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高度差800mの大岩壁、大太鼓付近から

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図35「鹿島槍・五龍岳」

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