2015年12月24日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第81山】瀬上池「静謐と閑寂、ハマの奇跡」

「横浜市域で最も秘境ムードが感じられる所は?」と問われればいろんな回答が出てきそうだが、私のイチオシは栄区の西部に位置する瀬上池である。

アプローチは様々だが、根岸線本郷台駅または港南台駅から街中と車道をひたすら歩き、栄高校付近から入るのがお奨め。雑木の尾根に囲まれた谷戸が別世界の入口だ。少し回りこむと、つい先刻まで街中にいたのが嘘のような静寂の只中になる。右手にせせらぎ、左手に田圃などを見ながら歩いていくと正面に土手が現れ、その奥がそのまま池を成している。近郊に残る池の大半がそうであるように、元は農業灌漑用の溜池で、土手は水をせき止める、いわばダムの役割だ。

道から別れた階段を下った先に展望スペースがあり池全体を一望、しばし佇む。秋の盛りで早い時間帯なら、鳥のさえずりも僅かで静けさに包まれる。深い谷間だけあって風が通いにくく、しばし水面は鏡の様相となる。そこに映る紅葉の樹々をじっと見つめていると、どちらが実像なのかわからなくなってくるような錯覚すら覚えてしまう。構図と言い色彩と言い、天賦の名画そのものではないか。

三浦地区一帯にある他の池に比べても、秘境ムードは瀬上池が断トツだ。他の例では、すぐ裏手が住宅街であったり、池畔に管理施設があったりする。反面ここでは池及びその周囲一帯が町に接していない。山側の周囲は深い樹林に囲まれ、唯一開けた前方は先に歩いてきたような谷戸が緩衝地帯となっていて、下界の気配を絶っている。静謐と閑寂の支配する世界。人里離れた仙境ではない、まぎれもなく大都市横浜の一角なのだ。ハマの奇跡と言っても大袈裟ではなかろう。

この一帯が往年のままに残された意義は大きい。池に近い所まで開発の計画があったが、反対運動もあり、どうにか幹線道路付近までに抑えることができた。反対の声を上げた地域住民や、板挟みながらも保護に奮闘した本市関係者の熱意の賜物であり、大いに敬意を表したい。市民全般にとって第一級の自然遺産、まさに「ヨコハマの至宝」なのである。

◆おすすめコース
※瀬上池だけでは歩き足りない向きには、紅葉のダブル堪能の適地として、鎌倉の獅子舞谷戸まで歩くことをお勧めしたい。本郷台駅または港南台駅―谷戸入口―瀬上池―天園―獅子舞―鎌倉宮(4時間:初級向け)

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瀬上池の実像と鏡像(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎本市環境創造局編「円海山周辺マップ」が便利。ネット検索してプリントアウト

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