2016年5月12日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第88山】青ヶ島の山々「絶海の孤島の迷峰たち」

「大人ヶ凸部(おおじんがとんぶ)」はて、これは一体何の名前でしょう?本欄の質問だからバレバレだが山の名前である。伊豆諸島最南端の青ヶ島の山だが、国土地理院公認のれっきとした正式名称だ。人・凸・部、およそ山には縁のない漢字ばかり、おまけに山とも峰とも付かないから、どうにも人を喰ったような山名ではある。

青ヶ島は八丈島から南70㎞沖合いに浮かぶ文字通りの絶海の孤島である。標高は400m台だが、海中深くから噴出した火山が頭だけ海面上に出ているわけで、実体はかなり大きい。太平洋の荒波が容赦なく当たるため、浸食が激しく島の周囲はすべて300m近い断崖絶壁をなしている(写真)。

中央部は深く陥没して中から小型の火山が噴出。かような孤島に古から人が住んでいたのは驚きだが、江戸の天明年間に噴火のため全島上げて八丈島に避難、50年の後に帰還を果たし「還住の島」としての歴史を持つ。現在は人口200名足らずながら青ヶ島村としてニッポン最小の自治体を構成している。

複雑な火山島であるからいくつかのピークがあって登山の対象としてもユニークだ。まずは冒頭紹介の大人ヶ凸部だが、これは完全なヤブ山でどこがピークなのかも判然とせず、よほど物好きな人以外には奨められない。島の最高峰は少し簡略した名の「大凸部」で、山頂から陥没部始め島全体が一望。ただし山頂まで階段が整備されていてハイカーには物足りないかも。

一番のお勧めが陥没部中央のミニチュア火山・丸山だ。前二山とは真逆の平凡極まる名前だが、実は江戸時代に全島避難を余儀なくさせた噴火の張本人でもある。陥没部の底からスタートするが、外輪山の壁の方が遥かに高く、外部に強風が吹き荒れていても周辺は静寂そのもの。小山だから数分で火口壁の上に到達しお鉢回りもできる。やはり中央火口部が陥没しているが、思い切って踏み込んでみると、まさにワンダーランド。すっきりした照葉樹のジャングルになっていて探究心が躍る。噴火から200年余り、すっかり変貌した火山・植生、そして苦難の歴史に思いを馳せるには、この静謐な自然境の只中に勝る所はないだろう。

◆おすすめコース
八丈島から船便があるが週4便のみ、しかも荒海のため欠航率が半分近い。八丈島から定期ヘリ便の方がずっと確実。

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ヘリから空撮した青ヶ島(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎国土地理院2万5千分の1地形図「八丈青ヶ島」

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