2008年9月15日(月曜日)[ 絵本ひらいてみませんか ]

第54回「旅するベッド」

絵本「旅するベッド」の表紙

旅するベッド
作:ジョン・バーニンガム
訳:長田 弘
ほるぷ出版


 

「なおちゃーん アミもってきたよォ」
横断歩道で信号が変わるのを待っていた4歳くらいのおんなの子が、向かいの公園に向かって叫びました。
網を振ってピョンピョン跳びはねながら。
もう嬉しくてたまらない、という様子で青になると駆け寄っていきます。
私までなんだかワクワクして後に続きました。
3、4人の友だちの中のすこし年かさのなおちゃんは、チラリと見て「えーっ アミなんていらないよ」とひとこと。笑顔もありません。

でもおんなの子はめげずに「だってアミがないと、とれないよ」と返しました。
その場を通り過ぎながら(傷つかないといいな)とハラハラしました。あの弾んだ気分、みんなに喜んでもらえる、と跳んで帰って持ってきたのでしょうに…。
でも傷ついたのは私の方でした。たったひと言の大きさを改めて感じます。
さわやかな秋風の中でセミが鳴きアゲハ蝶が舞う夏の名残りの1日のことでした。
この夏どんな思い出が残せましたか?
次の夏には世界1周の船旅を、が夢ですが私の代わりに、きょうのお話の中でジョージーが叶えてくれました。

《あのベッドは もうちいさすぎるわ。パパといっしょにショッピング・センターであたらしいベッドをかってらっしゃい》
途中の古物屋で古いベッドを見つけます。これはどこへでも自由に旅のできるベッド、とのこと。
ジョージーとパパが洗ってきれいにすると枕元に何か書いてあるのを見つけます。かすかな文字は読めないところも。Mで始まりYで終わる「お祈りの文句」がはっきりしません。

早々にベッドに入って言葉を言い当てようとしますが何も起こりません。 ところが、ある晩フワリと旅に出たのです。
ジャングルで迷子のトラを無事届けたのも、海賊から逃げられたのも、みんなベッドのおかげ。
ところが夏休み、家族で旅行に出掛けた間に留守番のおばあちゃんが…。
「ガンピーさんのふなあそび」がよく知られている一冊ですが、バーニンガムの絵本はどれも、子どもの夢や願望を代弁して満足感を与えてくれます。
何度も引き直したようなペン描きに、色鉛筆や水彩のほのぼのした絵が素敵。

「横浜市従」第1213号(2008年9月15日)より

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