2016年7月6日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第92山】焼岳2455m「登るのなら今!」

上高地の河童橋から見て、穂高連峰の反対側、梓川の果てに堂々とした佇まいを見せるのが焼岳である。秀麗な穂高に対し、どっしりと番兵の様に立つ骨太な姿が印象的だ。

現役の活火山であり、大正4年の爆発による泥流が梓川をせき止め、大正池を創造したのは有名な話だ。昭和37年には水蒸気爆発によって峠の山小屋が被災し、以降は長らく登山禁止になってしまう。ようやく平成3年になって北峰のみ登れるようになり、最高地点のある南峰の解禁も時間の問題かと思われたが、結局そうはならずに今日に至っている。

かように焼岳の営みは激しい。短期間にもかかわらず、上高地に富と災厄をもたらしてきた。そんな山へのアタックは、変化に富むであろうことは想像がつく。下から見上げる焼岳は、上部から山裾へ何本ものえぐれた谷が伸びているのが最大の特徴だ。登ってみて間近に見ると、如何に凄まじいのかがわかる。深さは100m以上、今なお縁から崩壊が進行中で、崖際ギリギリに生えている樹々の命運は風前の灯。

上部は荒涼とした岩塊エリアで植生もないが、その分展望は素晴らしい。連嶺を成す北アルプスの他の山とは違い独立峰だから、どの山とも距離があって実に開放的な大パノラマが展開する。穂高など山の眺めはもちろん、特に印象深いのは見下ろす上高地の景観だ。ゆったりとした大きな谷地形が緑に染まる中に、大正池の碧色や帝国ホテルの赤屋根が実に鮮やか。間近では随所で岩の隙間から暖かい噴気が吹き出し、北峰直下では盛んに噴煙が上がる。正に生きている火山を実感できるのだ。眺めも山自体も、北アルプスのオンリーワンと言えよう。

登山者はさほど多くはない。せっかく北アルプスまで来たのだから、穂高や槍といったスター峰に行きたくなるのが人情なのかも。だがもし「そんなに言うならその内に登ってみるか」と思い立った貴方、今シーズン中にでも登頂することを強くおすすめする。なにせ激動の山だ、明日にも噴火して恒久的に登山禁止になってもおかしくない。動かざること山の如し、ではないのである。

◆おすすめコース
中ノ湯-焼岳-新中尾峠-上高地(6時間:中級向け)※中ノ湯から往復ならやや短いが、火山としての営みを見るなら上高地コースの方が良い。

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眺めるなら大正池からが一番!(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図37「槍ヶ岳・穂高」

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