2016年8月25日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第95山】高天原 約2,100m「ニッポン最奥の仙境」

秘境マニアや探検愛好家は別として、一般的技量の登山者にとって、ニッポン最奥のエリアはどこか。さらに単なる一ピークなどではなく、ちゃんと泊まれる小屋や見所がまとまったエリアとなると?…これはもう北アルプス黒部峡谷の上流に位置する高天原一帯を置いて他には無いだろう。

とうてい1日では辿り着けない。富山方面から入山、山麓から一旦はアルプスの主稜線まで上がって1泊。翌日は黒部源流部のある谷底まで下って、そこからいくつかの峠や谷を踏破した末にようやく達するのが高天原なのだ。山の深部であるのに、ゆったりした平地や湿原が点在し、見事な原生林の上から北ア最奥部に位置する名峰が惜しげもなく美姿をのぞかせている。夏季には高山の花が咲き乱れ、秋には樹々や野辺が錦繍に彩られ、まさに仙境。

そんな深遠なエリアの真只中に、整備された山小屋があることに驚かされるが、そこをベースに軽装で周辺を散策できることも大きな魅力だ。小屋から奥方へ20分も歩けば、知る人ぞ知る最奥の秘湯:高天原温泉に行き着く。渓流沿いに露天風呂と脱衣場があるのみだが、どちらも男女別だから女性でも安心して入浴できる。湯上りにはさらに奥へ辿って行くと竜晶池が姿を現す。一帯はその名も夢ノ平と言い、広やかで開放的なムード、雄大な薬師岳連山が圧倒的。もはやこの先に道はなく、文字通りの究極の最果てだ。夜は小屋前から空を眺めてみよう。下界の灯の影響が一切ないので、漆黒の夜空に正真正銘の満天の星が期待できる。

下界から1日では登れないエリアなら、あちらこちらに見受けられるが、高天原一帯からは通常1日では下山もできない。この事実こそ、ここのオンリーワンなのだ。湯に浸かり、池畔に佇み、星を眺める時、1日では帰れないと言うプレッシャーを感じることだろう。下界で何があろうと、2日間はどうしようもないのである。しかしそれは「不安なる幸福感」に他ならない。何事も便利になり過ぎ、時間の感覚がなくなりつつある平成ニッポンにあって、かようにスロー過ぎる境地に浸れること自体、貴重で得難い体験ではないだろうか。

◆おすすめコース
折立-太郎兵衛平-薬師沢-高天原(往復20時間の3泊4日:上級向け)
※帰路は雲ノ平経由で新穂高を目指すとさらなる大縦走となる。

1449-2

これぞ最奥、竜晶池と薬師岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図36「剱・立山」

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