第41回「動物会議」
動物会議
ユーリヒ・ケストナー:作
ヴァルター・トリアー:絵
池田 香代子:訳
岩波書店
うららかな日と冷え込む日が交互にあって、それでも確実に春がやってきます。
次から次へと花が開き、心が浮き立ちます。地球に生まれて、日本に生まれて良かった、と実感する季節ですね。こうして自然を愛でる気持ちは平和であればこそです。
いま、地球の上に起きている戦争や紛争は、いったい幾つあるのでしょう。そこで苦しむ人々に明日への希望はあるのでしょうか。
きょうの絵本は「点子ちゃんとアントン」などでご存じのケストナーが49年、戦後わずか4年後に出しました。ドイツ人ならではの、書かずにはいられない、という大作です。 ここは北アフリカのチャド。ライオンのアーロイス、キリンのレーオポルト、象のオスカルは、ひとつのニュースを耳にします。
それは戦後4年、新たな戦争が始まるらしいということ。
戦争でひどい目にあうのはいつも子どもたちなのに、おとなは「子どもたちの未来のために」と言う。なんて図々しい!と動物たちは憤慨します。
なんとか戦争を止めさせなければ、と考えて出した答えは「動物会議」。
人間たちの「世界外相会議」が開かれているケープタウンに、こちらも全世界の動物の代表を集めるというもの。
ここから多くのページを割いて、どのような準備や努力で集まるのかが展開します。細かいところまでユーモラスに描き込まれていて、ふと「カラスのパンやさん」(かこさとし著)を思い浮かべてしまいました。
熱心な討論のあと、アピールを発表します。
「子どもたちの未来がこれ以上壊されるのを黙ってみている訳にはいかない」。
だいじなことを決めるのは書類じゃない。権威の象徴のような軍服(制服)は無くす、など。
動物たちは、どんどん実行に移します。痛快です。
ダメなおとなから親の資格を取り上げ、子どもの園をつくります。とうとう首脳たちは、動物の提案した条約に調印し、戦争は未然に防げたのです。
その条約には、戦争の放棄・武器の廃棄などがあります。日本国憲法と重なりますね。 85ページもの長いお話で、活字も多く絵本としてはボリュームがありますが、ぜひ親子でどうぞ。
「横浜市従」第1200号(2008年2月15日)より




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