2016年9月30日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第97山】白神岳1,235m「開発から保護への両極端」

ニッポンの冷温帯で原生林の代表格と言えばブナしかない。漢字で書くと「木偏に無」、分解すれば「木」と「無」、つまり木材としての価値が無い。建材にはならないし他の用途もごく限定的、そう看做されてきたのがブナなのである。そんな低価値が幸いして、却って伐採を免れ大規模な原生林が残っていたのだが、戦後の林道の発達で続々と皆伐の憂き目にあってしまう。

白神山地は青森県と秋田県に跨る大山地である。標高こそ低いが、エリアの広さや奥深さはニッポン有数のもの。世界最大級とも言われる広大なブナ原生林が残されていたが、80年代以降、林道開発と大規模伐採の計画が持ち上がる。それに呼応するように反対運動も起き、様々な葛藤と経緯を経て、90年に森林生態系保護地域に指定され93年には世界自然遺産に登録と、あれよあれよと言う間に大出世した。結果、開発がストップしたのは良かったが、核心部エリアの大半が立入禁止になってしまう。これほど膨大なエリアでありながら、気楽に登山ができるのは周辺の僅かな部分に限られてしまっている。

その代表格がズバリ白神岳を核とする一帯だ。山頂に無人の小屋があるので是非ここに泊まりたい。山頂から日本海に沈む夕日が絶品。山地の展望も見事で、一帯の最高峰・向白神岳を始め、ブナの樹々したたる山のうねりが一望である。そこへ足を踏み込むことが一切許されないとはなんと言うジレンマだろう。

翌日は北へと縦走する。山地の周辺域のせいかどうか、ブナ原生林の見事さでは物足りないのだが、とにもかくにも山と樹しかないエリアで海の眺めもいい。ラストにはご褒美ともいうべき十二湖の青沼が待っている。深い藍を湛えた水の色は神秘と言うしかない。

それにしても全面開発が一転、一切立入禁止とは極端に過ぎる。条件付きでいいから核心部にも一般者が立ち入れないものか。実は人の目の届かなくなった自然ほど危ういものはない。一部の関係者がこっそり良い様に開発してしまった事例は数知れないのだ。貴重な自然に生で触れ理解することは国民の権利であろうし、自然保護にも役立つと思うのである。

◆おすすめコース
白神岳登山口-白神岳-十二湖(10時間:中級向け)※白神岳日帰りピストンなら往復7時間

1452-2

白神岳山頂からの向白神岳方面(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎「白神岳登山案内図」で検索して案内マップをダウンロード、国土地理院2万5千分の1地形図「十二湖」「白神岳」とセットで

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