2016年10月13日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第98山】岩菅山2,341m「陰の実力者」

世間には、目立たないながらも侮れない実力者が往々いるものだ。山の世界も然り。百名山でもなく登る人も少ないが、近隣から眺めて、そして登ってみて抜群の存在感を示す山がある。上信越エリアは取り留めもないほどの膨大な山岳地帯であり、名峰が引きも切らないが、姿・登り甲斐とも備えた実力者が控えている。
それが志賀高原の最高峰、岩菅山なのである。

山姿は雄大。稜線を境に西側に樹林の大スロープを引く一方、東側は岩がちで深く切れ落ち、その対照の妙が山のシルエットを印象的なものにしている。山上部は避難小屋のある岩菅山、それより高い裏岩菅山、さらに大きく東へ派生する烏帽子岳の3ピークから成る。夫々の中間部は大して落ち込まず、遠目には三山あい揃って雄大なスカイラインを構成している。その全長7㎞ほどの三山歩きが最大の売りだ。起伏が激しくないからゆったりした高原散策の風情がある一方、山姿で見えた東の急崖と西のスロープが変化ある風景となって目を楽しませてくれる。標高は十二分、樹林も途切れとぎれだから縦走中はアルプスにも負けない大パノラマを満喫できる。山としての実力は計り知れない。

自然度の高さでも一級品なのだが、開発の波に呑まれかけたことがある。長野冬季オリンピックで滑降競技会場の候補に挙がったのだ。滑降には長大な標高差が必要で、西面の例の大スロープ(800m差)に白羽の矢が立てられたのである。これには当時JOC会長でSグループ総帥のT氏(その後失脚)の強い思惑もあったと聞く。だが志賀高原唯一の手つかずの自然境であったことから反対運動が起き、結局断念され滑降の会場は北アルプス八方尾根に変更となった。

もし当初の目論見通り開発されていたら岩菅山の状況は一変していただろう。リフトがあるから山頂まで観光地化して、志賀高原の最高地点として主要スポットになっていたのではないか。それに加えて素晴らしい山頂環境である。岩菅山の名声はニッポン中に轟いていたに違いない。が、そうはならなかった。名を上げない代わりに原始境維持という実を得た。名声など結構、いつまでも陰の実力者であって欲しい。

◆おすすめコース
岩菅山登山道入り口-岩菅山-裏岩菅山(往復9時間:中級向け)※山頂の避難小屋に泊まればより充実

1454-1

岩菅山山頂付近の景観(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図17「志賀高原

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.