2016年10月31日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第99山】アヤメ平1,969m「木道は誰のため?」

尾瀬ヶ原散策だけでは物足りないが、燧ケ岳や至仏山などの本格登山はちょっと……と言うクラスに格好の充足度を与えてくれるのが、尾瀬の南側山上に位置するアヤメ平だ。鳩待峠から入り、まず現れる傾斜湿原・横田代の優美さに心奪われるがこれはまだ前座。真打ち・アヤメ平は稜線一番の高みに悠々と展開する。山あいの尾瀬ヶ原と異なり、遮るもののない山上だから抜けるような開放感が最大の魅力。青空と湿原が一体化する様はここならでは。点々と花の咲く夏のグリーン、黄金色に色づく秋の草紅葉、共に素晴らしい。

下山は尾瀬ヶ原に道を取って、山上とは趣の違う湿原美を楽しむといいだろう。ただ注意したいのは山間部のコース全般にわたって敷かれている木道そのもの。雨の後で濡れていると実によく滑る。尾瀬ヶ原と違って傾斜のある所に多くが敷かれ、また樹林下では中々乾いてくれない。特に初心者は、乾かない内は歩かない方が無難だ。

そもそも尾瀬に木道が敷かれるようになったのは1950年代にさかのぼる。当初はぬかるみに難渋する登山者のために敷設されたが、次第に湿原を荒らさぬよう自然保護のためにと目的が変貌。やがて尾瀬全域で敷設が進んで、その総延長は現在60㎞を超える。

尾瀬ヶ原本体は広大で、湿原の荒れが目立つ前に木道が敷かれ回復も早かった。一方、山上のアヤメ平はエリアが狭いこともあって、溢れかえる登山者に集中的に蹂躙されてしまう。60年頃には湿原全体に泥地が広がって見るも無残になってしまった。70年代から湿原を回復する地道な取り組みが始まるが、山上のため自然環境が厳しい分だけ回復は難航。ネット等を敷いて土成分の流出を防ぎ、付近から採取した種を撒く。気の遠くなるような作業が40年以上続いた今、湿原景観は見事に回復しつつある。回復の難しいエリアも一部にあるが、ともあれ登山者はまた大きな宝を手にすることができたわけだ。

濡れると厄介な木道だが、人間様の安全のためではなく、自然保護のために設置された物であるのだからと割り切る他はない。濡れても滑りにくい木道を開発中との朗報もある。尾瀬は進化の最中なのだ。

◆おすすめコース
鳩待峠-アヤメ平-竜宮十字路-山ノ鼻-鳩待峠(6時間:初級向け)※日帰り周回も可能だが、やはり尾瀬ヶ原で1泊して朝夕の湿原風景を堪能して欲しい。

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秋のアヤメ平、木道も景観のアクセントになっている(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図14「尾瀬

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