2017年6月23日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第112山】岩手山 約2,038m「神々の原風景」

「ふるさとの山に向ひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」

石川啄木が故郷の岩手山を詠んだ有名な歌である。南部富士とも呼ばれ、どっしりしたスタイル、ニッポン人における富士山の如く、県民の心象的シンボルとして親しまれている。

人気の山だけあって登山道が何本かあり、大半の人は日帰りで登るが、是非ともお勧めしたのが八合目の避難小屋での1泊だ。避難小屋と言いながら、シーズンには地元山岳会のメンバーが交代で管理している。小屋の造りは立派で内部はリフォームされ清掃も行き届き快適そのもの。別棟の水洗トイレも実に清潔で臭い無し。北アルプスの営業小屋と比べても平均点以上なのに、宿泊協力費は1700円のみと格安。食糧は要持参だが小屋前に名水が出ていて自炊も楽しい。

小屋から山頂までは1時間ほど、天気が良ければ暗い内に出発して是非とも御来光登山をしよう。夜明け前のピークは荘厳、眼下に雲海が広がり背後には早池峰山など北上の山々。岩手山自体の火口は穏やかな緩斜面で構成され、礫や砂地の斜面には初夏ならコマクサの大群落が咲き乱れ、秋なら絵具を投げつけたように原色の朱や黄の彩りが見事だ。こんな環境だから、産まれたての朝の光線が山頂から山裾を順々に染め上げていく様は、キザな表現ながら「神々の原風景」と言うしかない。背後には八幡平へと続くたおやかな山々が延々とうねり、そこに岩手山のビラミダルな影が投影される「影岩手」が実に雄大だ。

山頂部は火口を中心にぐるりと一周できる。富士山頂の様な荒々しさは皆無で、どこまでも穏やか。中央に盛り上がる火口丘も程よいアクセントだ。お鉢巡りの後の行動パターンが多彩なのも魅力。江戸期の溶岩流である焼走り方面へ下るも良し、健脚なら延々と八幡平方面へと縦走すれば充実度はひとしおだろう。

眺めて一流、登って感動。子どもの頃から親しんできた岩手県人も、登ってみてより故郷の山を誇りに感じるに違いない。もし啄木が登っていたとして、神々の原風景に接して一首したためたら、どんな歌が出来たことだろう。

◆おすすめコース
馬返-八合目避難小屋(泊)-岩手山-焼走(8時間:中級向け)※焼走登山口は温泉や食堂など施設が充実、下山ポイントに好適。

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岩手山頂の火口と雲海風景(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図5「岩手山・八幡平」

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