2017年8月4日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第115山】鳳凰山地蔵岳 約2764m「初登頂は外国人」

鳳凰山は、南アルプスの諸峰の中では甲府盆地側に最もせり出しているので、とにかく目立つし図体が大きい。そのでかい山体の上辺は長く、よく見ると3つの頂が認められる。それが観音岳、薬師岳、地蔵岳の鳳凰三山なのである。

最高峰は中央の観音岳だが、主峰を差し置いて、鳳凰山で圧倒的に有名なのが地蔵岳である。山頂に高さ20m近い岩塔があり、オベリスク(古代エジプトやローマ時代の塔状の記念碑)と呼ばれている。なんと言ってもその形がユニーク。ニッポンのあらゆる山頂景観の中で最もインパクトがあり、芸術品的な完成度が高い。ただ、残念ながら一般ハイカーには登れない。怪しげなロープが付いてはいるが、岩登りの経験者でなければ取り付かないのが賢明だ。

地蔵岳に初登頂したのは、明治時代に来日した英国人宣教師:ウォルター・ウェストンである。それ以前は意欲ある修験者でも、すべすべの岩塔のため手が出なかったのだ。ウェストンには本場ヨーロッパアルプスで鍛えた近代クライミング技術があったが、結局は結構ラフなロープワークで山頂を極めた。およそニッポンの著名峰で初登頂の人物と期日が、はっきり記録として残っている山など殆どない。地蔵岳はそのわずかな例外であり、しかもその人が外国人であった点はユニークと言うしかない。

当のウェストン師、同行の猟師から「あの神聖な頂に初めて登ったのだから、山麓に堂を建てて神主になるべきだ」と熱心に奨められた。が、彼はれっきとした牧師。受け入れるはずも無かったが、後年もニッポンの山に登り続けた。西欧にニッポンの山を紹介し、日本山岳会設立を奨めるなどして「日本近代登山の父」と称されるに至る。ニッポンの登山界では知らぬ人の無い著名人だが、故郷の英国で知っている人は稀だろう。その点、黒船来航のペリー的な存在であるかもしれない。

地蔵岳のつんとした尖塔は、注視すれば山麓からでも中央自動車道からでも見られる。たとえ岩上には登れなくとも、間近に見上げるオベリスクの迫力と美しさには見惚れるばかりだ。絶頂で得意満面になっているウェストンの姿を重ねてみれば感慨も深まろう。

◆おすすめコース
夜叉神峠登山口-薬師岳小屋(泊)-地蔵岳-御座石鉱泉(13時間、中級向け)
※主峰・観音岳からの大パノラマも無類の素晴らしさ

1480-1

正面にオベリスク(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図41「北岳・甲斐駒」

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