2017年8月25日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第116山】笊ヶ岳 約2629m「奇妙な漢字で迫る山」

冒頭はいきなり漢検の問題。表題の山名、ちょっと奇妙な漢字であるが、お読み頂けるだろうか?正解は「ざるがたけ」。ご存知、竹を編んだニッポン古来の容器である。ごく一般的な日用品ではあるが、筆者が若い頃に同僚であった年輩者でも読めなかったから、もう追憶の彼方の漢字になりつつあるのかもしれない。

古来、山名は日用品を模して命名されることも多く、笊ヶ岳もその例に漏れないことになる。ただ写真を見てもお分かりの通り、笊とは言ってもドジョウすくいに使うような浅いものではなく、ちょっと丈の深そうなむしろ「篭」に近い形状だ。そしてなによりこの山を特徴づけているのは、そんな「笊」が仲良く東西に二つ並んでいること。似通う二峰の並立は、ニッポンの山の中でも結構珍しい。東側を小笊、西側を大笊と呼ぶ。

標高は南アルプスの中では高い方ではないし、山頂部を支える山体もさほど大きなものではない。が、遠方からでもよく見分けやすい山である。それは取りも直さず、大笊・小笊が仲良く並んでいるからで、まるで二瘤ラクダの背中のよう。一度コツをつかんでしまえば様々な角度から、そしてかなりの距離があっても「おっ、笊ヶ岳だ!」と見つけることができる。

登山の対象としては難しい領域に属する。登山者が少ない上に小屋が一切なく、急峻でもあり、なかなか厳しい行程を強いられるからだ。が、山頂からの展望は申し分ない。山中に深く絡むため悪沢岳や赤石岳など、南アルプスの展望台として屈指との定評がある。また、大笊のピークから東を眺めると、小笊の脇に富士山が佇む構図となり、粋で絶品と讃えられている。日本百名山クラスをこなした骨のある登山者が、次に狙うべき山として地味な人気を博しているのである。

爪の上に竹冠、一見不可思議な漢字だが、覚えてしまえば単純明快で実に分かりやすい。竹だけで出来あがった笊は、シンプルで実にエコ。網目模様は芸術的ですらある。せっかく本欄で、山を介して馴染みになったのも何かの縁だ。戦前派の人でも知らなかった漢字で、「笊ヶ岳」と書ける様に覚えてみては如何だろう。

◆おすすめコース
雨畑-檜横手山-笊ヶ岳(往復15時間:上級向け)※山頂で幕営したいが、1日で上がるのは厳しい。

1481-2

千枚小屋から見た笊ヶ岳(右側のふたコブ山)(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図42「塩見・赤石・聖岳」

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