第55回「よじはん よじはん」
よじはん よじはん
文:ユン・ソクチュン
絵:イ・ヨンギョン
訳:神谷 丹路
福音館書店
先日法要を営んだ際にお経を上げていただいたのは若いお坊さんでした。息子さんでしょう、お父さんそっくりです。
若々しい声もいいものだなぁ、と聴きながら、ふと新美南吉の童謡「こぞうさんの おきょう」を思い浮かべました。
和尚さんの代わりに檀家へ出掛けた、こぞうさんのお話です。
お経を忘れないように唱えながら歩いていくと、野原で兎に出会います。
あそぼうよ、と誘われ遊んでいるうちにお経を忘れてしまいます。
兎が、それなら、と
「むこうの ほそみち
ぼたんが さいた
さいた さいた
ぼたんが さいた」
と唱えれば、と教えます。
こぞうさんは檀家の仏さまの前で、そう歌うと聴いていたひとたちはびっくり。そして(こんなかわいいお経は、きいたことがない)と、クスクス笑いました。
天真爛漫な子どもらしさのあふれたお話です。
お隣り韓国の絵本にも、こんなほほ笑ましい1冊があります。
4年前に描かれましたが、日本では昨年の出版です。
チョゴリを着た小さなおんなの子、ほのぼのしたお話にピッタリなんです。
このおんなの子が、隣のよろず屋(若い人には馴染みのない言葉でしょ)に入っていく場面から始まります。
《おじさん おじさん いま なんじ かあさんがきいてきてって》
おじさんは時計を見上げて、4時半だ、と言います。
《よじはん よじはん》
と外に出ると、商品のにわとりが水を飲んでいたので、じっくり観察。堪能して、
《よじはん よじはん》と立ち上がると、何か運んでいる蟻が目に止まります。ついて行くと巣穴へ。納得して
《よじはん よじはん》と歩き始めようとすると、穴にいれる寸前で、トンボがくわえて飛び去ります。
こんどはトンボを追いかけて…。
道草をして日はとっぷり暮れました。おんなの子は心が満たされ意気揚々と帰ってきてこう言います。
《かあさーん いま よじはん だって》
まだ時計が家にはない、日本による植民地時代のお話です。
秋の夜長にイ・ヨンギョンのもう一冊「あかてぬぐいのおくさんと7人のなかま」も、ぜひどうぞ。
「横浜市従」第1214号(2008年10月1日)より




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