2017年9月15日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第117山】鳥海山 約2,236m「山頂のジレンマ」

ニッポンには数多くの火山があるが、標高が山自体の大きさを表しているわけではない。小サイズでも基盤の高い山地から噴出していれば、下駄ばきで標高を稼げるからだ。一方で海岸線から直接そそり立つ火山は、標高が額面通りに山の大きさとして通用する。トップはもちろん富士山だが、№2は山形・秋田の県境に跨る鳥海山だろう。

出羽富士とも呼ばれ、秀麗な裾野が海岸まで伸びるのは本家富士山同様。山頂部は最盛期には2500mを超えていたと推定されているが、有史以前に大崩壊して、巨大な馬蹄形の鍋底地形が残った。崩壊で残された壁のトップを七高山と称し、江戸時代までの鳥海山最高峰でもあった。

ところが、1802年に鍋底の最高部で噴火が起き、溶岩ドームを形成。新山と名付けられたトップが、旧来の最高峰より僅かに高くなってしまったのである。現在は新山にも登ることができるのだが、旧来の七高山より7m高いだけなので見た目にはどちらが高いのかわからない。オマケに近隣には似たような高さの岩ドームがいくつもそそり立っていて、最高地点にいる感覚としては些か物足りない。

その点では七高山の方がすっきりしているのだが、もちろん今度は新山が邪魔で一部の展望を欠く。なまじ中途半端に新山が噴出したお蔭で、どこに立っても「最高点を極めだんだぞ!」という感慨に浸りきれない、得も言われぬジレンマを感じてしまうのである。

とは言え、活動期の長い巨大火山であるから、登山コース周辺の見どころは満載だ。漢字の「心」の形になって残る「心字雪渓」。伸びやかな草原の底で円形の水を湛える火口湖「鳥海湖」。馬蹄形の尾根と壁とが作る武骨な景観と、外回りの優美で長大な裾野が見せるコントラストの妙。

そして鳥海登山のハイライトは何といっても朝夕にある。日本海に沈む壮絶な夕陽も捨てがたいが、極めつけはご来光によって山体のシルエットが描き出す「影鳥海」だ。キャンバスはどこまでも平坦な海、そこに描かれる影模様の完成度の高さ・美しさ。彼の富士山をも凌ぐ、ニッポン一のシルエットといっていいだろう。

◆おすすめコース
滝ノ小屋口─河原宿─七高山─大物忌神社(泊)─新山─鳥海湖─鉾立口(9時間:中級向け)※山麓から日帰りも可能

1483-04

七高山から見た新山(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図8「鳥海山・月山」

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