2017年10月18日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第119山】以東岳 約1,772m「不遇の東面」

東北地方の大山脈として飯豊連峰と双璧をなすのが、山形と新潟にまたがる朝日連峰である。最高峰は大朝日岳で日本百名山の登頂目標にもなっているが、この山自体はさほど立派とは言えない。連峰中の最高峰であるので盟主とみなされているが、どんぐりの背比べの様な中央部でちょっと他より高い、いわば相対的トップの観がある。

では朝日連峰で一番立派な山は?と問われれば、これはもう以東岳を置いて他にない。連嶺の北端にどっしり、独立峰の風格が漂う。さらにこの山の価値を高めているのが北麓の山懐に佇む大鳥池だろう。朝日連峰の、否、東北山地の珠玉とも言うべき神秘的な池だ。広大極まるブナ原生林の中にひっそりと水を湛え、巨大イワナ「タキタロウ」の伝説でも有名である。

山自体は南北方向に長い。東側から眺めると、緩やかな中にも細かいアップダウンでメリハリの利いた稜線の頂点に、慎ましくも凛としたピークを構成している。東北チックな大らかさと粋を併せ持つ、得も言われぬ雄大さを醸し出しているのである。
かように名峰でありながら、大朝日岳よりはかなり格下に甘んじている。要因として思うに、以東岳を眺めるポイントは大概の場合、朝日連峰の主稜線上、つまり南側からになってしまうこと。それ自体はまとまりある台形状のピークで格好いいのだが、東側から見たような大らかさに欠けてしまうのである。東西方向よりも南北に長い山ならではの宿命だろう。ところが肝心の東側には登山道が無い。積雪期に踏み込むしかないのだが、そんな人は余程の物好き、ごくごくまれ。憐れ以東岳は、己の一番格好いい姿を、誰も愛でてはくれないのである。

実力の割には不遇な山は全国に数多いが、以東岳もその例に漏れない。が、一番イケメンな姿は見られずとも、ブナ原生林を抜けた果てには、無類の大展望が待っている。大概は朝日連峰縦走のついでに足跡を残す人が殆どだが三泊が必要だ。単独で狙っても十分に価値のある山である。それなら山中一泊で済む。神秘の大鳥池とセットで訪ねて、他山では得られない感動を満喫したい。

◆おすすめコース
泡滝ダム-大鳥池-以東岳(往復11時間30分:中級向け)※大鳥池畔の大鳥小屋か、山頂の以東小屋に泊まることになるが、どちらも営業小屋ではないので、食糧や寝具が必要。

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ズバリ東側から見た残雪期の以東岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド◎◎昭文社:山と高原地図9「朝日連峰」

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