2017年11月6日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第120山】シャウヅ山 1,835m「光と陰の境に」

なんとも奇妙な名の山である。別に栃生山との名もあり、どうやらそちらが本来の名称のようなのだが、国土地理院地形図の記載である「シャウヅ山」で、世間一般には認識されてしまっている。また、「シャウゾ」とか「シャズゾウ」なる読み方も一部に言われている。おそらくは元々の栃生山を、誰かが何かの弾みで「シャウゾウ」なる読みを充ててしまい、他に流布する間に「シャウゾ」や「シャウヅ」に変化、それが独り歩きして、地形図上の山名を記載する段になって、たまたま「シャウヅ」になってしまった。そんなところではないか。あまり多くの人の話題に上らないマイナー地名は、こんな感じで「何となく」決まってしまったものも多いに違いない。

名前が珍妙なのはともかく、シャウヅ山それ自体はいい。山の所属は南アルプス深南部、大井川の源流に位置する極めて原始的なエリアに当る。小屋もまともな道もない、ごく一部のマニアのみが足を踏み入れる領域だ。そんな原始エリアの縁に位置しているのがシャウヅ山で、一般登山者でも深南部原始境のエッセンスを味わえることに大いなる存在価値がある。

手前の奈良代山まで林道が通い、そこから入山する。幅広いゆったりした尾根が伸び、広葉樹の明るい森が続く。傾斜もきつくなく、半ば逍遥気分で森歩きが楽しめる。山頂からは西側の展望がいい。一般道はここまでだが、是非にも反対側に踏み込んでみたい。山頂一帯の標高が、ちょうど広葉樹と針葉樹の境に当たり、一歩裏側に踏み込むだけで植生が180度変換、深い針葉樹の森に変貌するのである。これまでの明るい森から一変、遥かに高い大きな樹が連なり、天空から差し込む陽の光が、林床の苔を鮮やかに照らし出し、実に幻想的なムードに浸れる。

さらに奥へ踏み込んでいきたい衝動に駆られるが、その先はヤブ山のエキスパートの世界。山頂からせいぜい15分程度歩いた所で引き返しておく。山頂で再び溢れんばかりの光の世界に戻る。その境界には、「栃生」「シャウヅ」双方の山名併記の山頂看板が掛かる。光と陰の落差が、珍名山の最大の売りと言っていいだろう。

◆おすすめコース
JR飯田線水窪駅(タクシー)奈良代山―シャウヅ山(往復4時間:中級向け)※シャウヅ山まで一般向けとは言え、道標など無いので地図は必携。

1488-2

1488-3

シャウヅ山北面の針葉樹林と東面の広葉樹林

◆参考地図・ガイド 国土地理院地形図「水窪湖」

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.