2017年12月8日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第122山】菰釣山(こもつるしやま)1,379m「静寂の西丹沢」

人気の丹沢、シーズンの週末ともなれば大層の賑わいを見せる。大山や塔ノ岳など表丹沢はハイカーで溢れ返るし、蛭ヶ岳・檜洞丸など丹沢中心部も人影は多い。大室山を中心とする西丹沢になると大分閑散としてくるが、そこそこには登られている。かような丹沢人気も畦ヶ丸辺りまで。それより西南方に延々と延びる稜線は、交通の便が悪いこともあって殆ど人の姿を見ない。そんな静寂の西丹沢の主峰とも言うべき山が菰釣山である。

山上の稜線は神奈川と山梨の県境に当る。江戸時代に、相模・甲斐の村の間で山林の所有を巡って紛争が頻発、境界を示すために山頂に菰を釣ったことが山名の由来と言う。そして幕府による裁定結果が今日の県境を決めたのだから、我々とも無縁の話ではない。山頂は樹林が多いが展望も開け、殊に富士山の堂々とした眺めは天下一品である。

菰釣山単独狙いなら、山梨県の道志側からピストンで日帰りできるが、西丹沢一帯の良さは、大らかな稜線と、尾根状に展開するブナを初めとする自然林にある。できれば1泊して延々と歩き通したいもの。幸い、山頂から北へ20分ほど下りると、近年建て替えられた清潔な避難小屋が建っている。水場が遠くトイレが無いせいもあって泊まり客は稀だが、豊かな原生林の中で過ごす一夜は至福のひと時だ。しかもタダ。小屋を設営したのは神奈川県だから、例年納めている県民税が使われていると思えば、なんとなく得をした気分にもなってくる。

明けて2日目、早朝の斜光線に彩られる新緑や紅葉の森が絶品だ。新鮮な光の感覚を体感するには日帰りでは不可で、山頂に泊まって朝一で歩くより他ない。殆ど人に出会わず独り占めなのも小気味いい。神奈川にもこんな静寂郷があったのかという感慨に浸れること請け合いだ。

ところで稜線の山梨県側=道志村は横浜市の水源森であり、相当部分を横浜市が所有していると聞く。いっそのこと越県合併してしまえば、というような話もあったとか無かったとか。200年前の紛争でようやく確定した境界が、平成の今日、曖昧になりつつあるのは皮肉な話ではある。

◆おすすめコース
平野(山中湖)―高指山―菰釣山―避難小屋(泊)―畦ヶ丸―西丹沢ビジターセンター(10時間:中級向け)※山伏峠まで早朝タクシーを飛ばせば、陽の長い時期ならギリギリで日帰りも可

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朝の斜光線の森を行く(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図28「丹沢」

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