2018年2月27日(火曜日)[ 見解・資料 ]

横浜市 2018 年度予算案に対する市従の見解

大型開発や「呼び込み型」施策により大企業優遇を継続するとともに、新たな中期計画の策定と併せ、市民・職員の負担増が危惧される予算
 
1月30日、林市長は2018年度予算案と新たな中期計画の基本的方向を発表しました。この間、社会的にも問題となった児童虐待防止や子どもの貧困対策などで一定の施策や予算の拡充を盛り込み部分的に市民要求に応えつつも、企業誘致と観光・MICE、各種イベントなどによる「呼び込み型」施策を継続・推進するものとなっています。さらに新たな埠頭建設の事業化検討をはじめ、今後もこうした方向を継続・推進する姿勢を示すものとなっています。

新たな中期計画の基本的方向は、6の中長期的な戦略と38の政策から構成されており、5月頃に素案の策定を行い、9月頃に原案の策定を行う予定になっています。

予算規模は全会計総額3兆5,911億円(前年度比+0.6%)、一般会計1兆7,300億円(同+5.1%)を計上、4年連続のプラス予算で過去最大規模となっています。

siju01

(上の表をクリックすると拡大表示します)

1  2018 年度予算の概要

予算案の一番の特徴は公共事業などの「施設等整備費」です。2,474億円が計上され、前年度比は+29.9%にのぼり、一般会計に占める割合は11.6%から14.3%と増加しています。

市税収入は、個人市民税が県費負担教職員の本市移管に伴う税源移譲などにより4,406億円(前年度比+864億円)、固定資産税・都市計画税が土地の評価替えや家屋の新増築による増収見込みで合わせて3,307億円とするほか、3年連続の減収となっていた法人市民税は539億円(同+38億円)となっています。

個人市民税は3,867億円(同+864億円)となっていますが、県費負担教職員の本市移管に伴う税源移譲842億円を除けば、前年度比+22億円となっています。市債は、前年度当初予算比+22.7%の1,716億円としています。

この結果、「横浜方式のプライマリーバランス」が▲252億円となり、「一般会計が対応する借入金残高」は、+50億円の3兆1,670億となり昨年度末残高(3兆1,620億円)とほぼ同程度とし、目標の3兆2,000億円以下を達成する見込みとしています。

一方で一般会計の市債残高は、4年連続で増加しており、大規模開発事業への巨額の市債発行の継続は、依然として将来負担や市民サービスへのしわ寄せとして危惧されるものと言えます。

歳出では、施設等整備費は、2,474億円(前年度比+29.9%、+570億円、一般会計歳出の14.3%)を計上しています。横浜環状高速道路に345億円、国際コンテナ戦略港湾に42億円、山下ふ頭再開発に61億円など引き続き、大企業の基盤整備型公共事業や大規模開発事業に巨額の予算を投じています。その一方で、老朽化が進行している公共施設の保全・更新への戦略的対応は欠如しているといわざるを得ません。

また、企業誘致促進27億円、観光・MICE推進21億円、客船ターミナル整備35億円、ラグビーワールドカップ開催準備や東京五輪・パラリンピック関連で合わせて8億円など「呼び込み型」施策とともにカジノを含む統合型リゾート(IR)検討にも引き続き1,000万円を計上しています。

一方、市民向け施策を見ると児童虐待防止や子どもの貧困対策での新規事業や障害児・者の相談支援の拡充など部分的に市民要求に応えた施策も盛り込まれています。待機児童解消に向けた「保育所整備」は45億円を計上し、2,795人の受け入れ枠増を図りますが、認可保育所の新設は2,068人、横浜保育室からの認可保育所移行460人(移行による減▲438人)にとどまっています。

また、受け入れ枠増の7割は認可園となっていますが、その多くは園庭が無いなどの問題があり、子どもの発達保障に相応しい保育環境と保育の質が確保されているか検証が必要です。

全校実施されている中学校での横浜型配達弁当(ハマ弁)に7億円も投じますが、そのうち2億円は値下げに使われる一方、小学校の給食費は月額600円の値上げを行うなど矛盾が生じています。

学童保育では、児童数の多いクラブに対する補助の創設・拡充などの前進がありますが、国基準に合わせたものです。横浜市立大学への運営交付金は前年度比3億円増の128億円に増額されています。

特別養護老人ホーム整備は着工280床、継続300床と前年より20床減りましたが、来年度以降は公募を600床に倍増させるなどの前進が見られました。

市民要求の強い国民健康保険料、介護保険料、医療費の減免拡充の前進はありません。小児医療費の助成では次年度の助成拡大に向けたシステム改修が予定されています。商店街振興策は2.5億円で、企業誘致の10分の1の水準です。

siju02

(上の表をクリックすると拡大表示します)

2 市民の生活意識や生活構造を市政運営や政策立案に反映した予算案か

「平成29年度横浜市民意識調査」では、心配ごとや困っていることの上位5項目として、①「自分の病気や健康、老後のこと」51.2%、②「家族の病気や健康、生活上の問題」38.1%、③「景気や生活費のこと」21.4%、④「仕事や職場のこと」14.7%、⑤「子どもの保育や教育のこと」11.4%となっており、「自分の病気や健康、老後のこと」が昨年から0.1ポイント減ったものの引き続き5割を超ており、「仕事や職場のこと」は1.4ポイント増となっています。また、「子どもの保育や教育のこと」が0.5ポイント減ったものの「事故や災害のこと」と入れ替わり、6位から5位に上昇しました。

また、「市政への要望」では、①「地震などの災害対策」30.7%、②「高齢者福祉」27.6%、③「高齢者や障がい者が移動しやすい街づくり(駅舎へのエレベーター設置など)」27.5%、④「防犯対策」25.0%、⑤「病院や救急医療など地域医療」24.5%等が多く、さらに「通勤・通学・買い物道路や歩道の整備」「保育など子育て支援や保護を要する児童への援助」「商店街の振興」などが上位にあります。

こうしたことからも、市民は、高齢者福祉や医療、子育て支援、防災・防犯対策などの施策拡充によって、安心・安全の暮らしを望んでいることが伺えますが、こうした内容は予算案に十分反映されているとは言えず、むしろ横浜環状高速道路や国際コンテナ戦略港湾などの大規模開発事業に大きく予算が向けられています。「市政への要望」では、「高速道路建設」33位、「都心部整備」36位、「港湾機能」41位、「観光・コンベンション」42位(最下位)であり、多くの市民の要望に合致していない予算案と言わざるを得ません。

3 職員定数は増だが、職場要求に応えず、非正規・不安定雇用労働者を拡大

市民の信頼に応えながら必要な施策を推進するため、現場重視の考え方のもと、スクラップ・アンド・ビルドを基本とした見直しにより効率的・効果的な執行体制を構築するとして、条例定数では4年連続の増となる96名の増となっています。再任用を除く正規職員でも77名の増となっています。

しかし、そのほとんどは再任用対象者の減少による正規職員への復元と国の法制度改正を要因としたものであり、度重なる減員によって疲弊した職場の業務改善やサービス拡充のための正規職員増の要求に十分応えたものとは言えません。依然として非正規職員による代替えが進んでいると言えます。

林市政がはじまった2010年度以降を見ても正規職員は79名の増にとどまり、再任用職員+456名、一般嘱託職員+488名となっており、新規事業を含む業務量の増大に対して、非正規職員の増で対応していることが見て取れます。

減員も事業の廃止・縮小、業務量の減による見直しが減る一方、民営化・民間委託化等による対応が多くを占め、こうしたことは業務の担い手を非正規労働者や業務委託による不安定雇用の民間労働者に置き換え、「官製ワーキングプア」を生み出し、本来自治体がなすべき公的責任を放棄し、わずかな経費削減と引き換えに業務蓄積や業務継承ができない職場をつくり、安定した雇用対策にも逆行するものです。

siju03
(上の表をクリックすると拡大表示します)

4 「しごと改革の推進~不断の行政改革の推進」としての経費削減は毎年100億円超

毎年、「厳しい財政状況」を強調し、市役所内部経費削減の他、事務事業の効率化や業務の民営化・委託化、外郭団体への財政支援の見直し等を強めています。2018年度予算案でも市役所内部経費23億円、市立保育園の民間移管(3園/累計47園)、小学校給食業務民間委託(4校/累計177校)の継続や道路占用料等の見直し、行政サービスコーナーの廃止や外郭団体補助金・委託料の削減などの内容が並んでいます。合理的な事務経費の見直し等は進めるべきものですが、経費削減を目的とした市民負担の押し付けや事業の民間化、各種助成金・補助金の削減が市民生活に否定的影響を与えていないか十分な検証が必要です。

siju04

(上の表をクリックすると拡大表示します)

5 市民要望を実現し、真の経済活性化・市民のいのちと暮らしを守る予算に

2018年度予算案は、「次世代へ横浜をつなぐ、新たな一歩を踏み出す年」とし、「新たな中期計画」の策定とともに、その計画の初年度を踏み出すための予算としています。予算の構成を見ると、昨年第1に掲げていた子育て支援を中心とする「あらゆる人の力の発揮」は後方に追いやられ、経済・文化芸術・観光MICEを第1に掲げている点からも、企業側にシフトした立ち位置の違いは明白です。

また、「新たな中期計画」は「次世代へ横浜をつなぐ」ために6つの戦略と38の政策が基本的方向として発表されました。人づくりを中心に据えながらも人が「成長の基盤を支える」とし、「人・企業が躍動するまちづくり」に挑むとしている点からも、破綻したアベノミクス追随姿勢を継続するものであり、市民要望に正面から応えることよりも大企業が活躍できる環境づくりのための基盤整備、都市開発事業を優先するも
のと言わざるを得ません。

国政における政策問題とともに、横浜市が憲法と地方自治の本旨にもとづき、どう市民生活の改善や安心・安全の確保、住民福祉の増進につなげる予算にしていくか市従として各職場からの意見も参考にしながらさらに研究を深めなければなりません。

横浜市従は、組合員が働きがいを持っていきいきと職務を進めていくためにも市民本位の予算編成を求めて市民のみなさんとも共同してこれからも奮闘していきます。

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.