2018年5月17日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第131山】光岳2,592m「悠久1億年の果てに」

簡明にして潔い山名だ。しかも「ひかりだけ」ではなく、「てかりだけ」と読ませるところが心憎い。実に粋。山名の由来は、山頂の西側直下の光岩に由来する。頂まで緑に覆われた大きな山体の上部に、二つの巨大な石灰岩が嵌め込まれている。この岩が夕日に照らされてテカテカ輝くことから光岩と名付けられ、そのまま山名にも採用されたというわけだ。

光岳は南アルプスの南部に位置するが、姿そのものはシャープではなく格別目を引くものではない。標高自体も南アにあっては決して高くはない。しかも下界の林道等から遠く、本来なら玄人好みの地味な山であったろう。ところが、たまたま現代山岳の最高ブランドである「日本百名山」に選定されたことから、山岳ファンなら誰もが目標とする著名峰となった。奥深いポジションから、百名山の中でも登頂困難度では5本の指に入る。山小屋も営業小屋と避難小屋の中間的な存在でちょっと利用しづらい。そんな苦労の割には、平凡で達成感に乏しいから「どうせならもっと他の山を百名山に選んでくれれば良かったのに……」と愚痴る岳人も少なくないはず。

ともあれ登頂を果たしたら、是非にも山頂を越えて光岩まで足を伸ばしてみたい。足下には石灰質ならではの白っぽい岩が広がる。そもそも石灰岩とは、すべて南海のサンゴが造りだしたものだ。サンゴの生命活動を通じて、海の中で蓄積されていくのである。それがなぜ高山のてっぺんに?

はるか南の孤島で生成された石灰岩は、地球表面のプレート運動によって1億年単位のオーダーで日本列島に付加される。押し付けられ皺が寄り、それが山を成す。かくして海底にあった石灰岩は距離と高度の双方で、対極にまで運ばれてくるのである。

光岩は遠くからよく見えるだけあって、岩上からの展望が素晴らしい。眼下には幅と奥行きのある膨大な山脈が遥かに連なる。これこそが南アルプス深南部と呼ばれる、わが国有数の原始領域だ。果てしなき連嶺を眺めながら、悠久の山の歴史に想いを馳せる。光岳はそんな思索登山の格好の舞台と言える。困難を押して登頂した人への、最大のご褒美なのである。

◆おすすめコース
易老渡-易老岳―光岳(往復12時間:中級向け)※山頂近くの山小屋利用が必須だが、場合によっては自炊なので確認を。

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深南部の山から見上げる光岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図43「塩見・赤石・聖岳」

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