2018年8月16日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第136山】富士山御中道約2300m(山梨県)「縦ではなく横へ」

富士山は、縦に上へと登るもの。それは当たり前だが、横へ水平に歩く道もある。それが「御中道」である。中腹に鉢巻状に付けられ、諸ルートの五・六合目を結ぶ。江戸時代以降の富士講のルールでは、山頂に3度登頂した者だけが踏破を許されたと言う、由緒ある道でもある。現在はかなり分断されてしまっているが、中でも交通至便で自然豊かな一角が、遊歩道として整備されている。

スタートはスバルラインの終点、最も繁華な五合目だが、国際観光地の例に漏れずここも中国に来たかのよう。ところが御中道に一歩踏み出した途端、嘘のように静まり返った散歩道となる。富士山上部の草木の無い砂礫地と、山麓の樹海の境界に沿っているので、個性的な植生が魅力だ。7月ならシャクナゲが花盛りとなり、10月にはカラマツが美しく黄葉する。なにより見事なのは富士山本体の眺めで、距離が近すぎるため通常のイメージとは異なるが、雄大無比で緩やかな左右の稜線、絵の具を吹き散らしたような植生のパッチワークには目を見張る。下界側には名物の樹海が広がり、背後の南アルプス・八ヶ岳などの展望は富士山頂にも遜色がない。途中の御庭にはミニ火口がある。富士山の側火山の一つで、景観にアクセントを付けてくれている。一歩きしたら奥庭に立ち寄ろう。少し距離を置くだけで、富士山ご本尊の見え方がぐんと変わることに驚かされる。

さて本来は御庭の先、U字溝状に崩壊した大沢崩れまでルートがあった。深さ100m以上の凄惨な崩壊地形を眼下にできたのだが、そこに至る中道の一部が数年前に崩れてしまい、現在は通行不能。富士山と言う山は、いわば巨大な砂山、構造的にも不安定で常に崩壊を続けている。遠くない将来、大沢崩れが進行して山頂の火口とつながってしまえば、どこから見ても端正な富士山のシルエットは崩れてしまう。富士山が今日の様な姿になったのは僅か二千年ほど前のこと、この先も長くない。ニッポンの歴史時代に合わせるかのように秀麗なスタイルでいてくれるのは、天の配剤の妙としか言いようがない。山肌を観察しつつ歩けば、そんな感傷にも浸れるのでは?

◆おすすめコース
五合目-奥庭一周-御庭バス停:逆回りもOK(2時間:初級向け)※夏期のスバルラインは一般車通行止め、シャトルバスは御庭には停まらないので、路線バスに乗る。

1513-03

↑間近の富士山とスロープ(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎鳴沢村役場のホームページ→観光案内→遊ぶ・体験する→ハイキングのご案内、の順に検索

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